恋に変わるとき-4
コイツのそばにいるから変な気持ちが沸き上がってくるんだ。
急いで奴から距離を取る。
そうすれば次第に冷静になっていく頭。
ズキズキと明らかに二日酔いの症状を伴ったそれに、さっきの変な気持ちになった答えが導き出された。
そうだよ、あたしまだ酔っぱらってたんだ。
だから、臼井陽介に対して変な気持ちになったんだ。
酔った勢いでセックスしちゃう人なんてごまんといるんだし、輝美だってお酒が入ると「エッチしたい」なんて言ってるし。
臼井陽介にキスしたいって思ったのも、きっとお酒のせいだったんだ。
自分の中で結論が出ると、安心してしまう。
つまり、酔っぱらった頭をスッキリさせれば、この変な気持ちもキレイサッパリ無くなるはず。
「シャワー浴びて、目覚まそ……」
ふらつく足を奮い立たせ、あたしはバスルームに向かおうとした、その時だった。
「チェッ、チューしてくれないんだ」
あたしの背中に投げ掛けられた、聞き慣れた声。
一晩中つけっぱなしのエアコンのせいか、オールで歌い続けたせいか、お酒をガンガン飲んだせいなのか、それは少しかすれていたけれども。
い、いや……、そんなことより……。
恐る恐る振り返ると、いつの間にか起きていた臼井陽介が、白い歯を見せて意地悪そうに笑っていた。
途端に顔がカッと熱くなって、口元を手で押さえる。
「あ、あんた……、いつから起きてたの!?」
「んーと、お前が布団かけてくれた時に目ぇ覚めた」
ってことは……、さっきの、全部気付かれてた!?
恥ずかしさと惨めさで涙が込み上げてくる。
あたしはもう奴の顔が見れなくて、俯いたままその場に立ち尽くしてしまった。
「女の子から襲われるならいくらでも大歓迎なのに、やっぱり真面目だねえ、あんた」
クククと笑いながらあたしを見つめているのだろう、からかうような、冷やかすような視線が刺さるのを感じた。
それがなんだかたまらなく悔しくて、あたしはギリッと奥歯を噛んだ。