恋に変わるとき-3
――お前は、彼氏にもっと触れたいとか思っ たことねえの?
ドクン、とまた心臓が大きく踊り出す。
いやいや、コイツは彼氏でもないし、好きでもない。
むしろこんなチャラい男なんて大ッキライなくらいなのに。
……なのに。
――キスして、抱き合ってさ、もっともっと 繋がりたいとか思わない?
ああ、ダメだ。
まるで吸い寄せられるようにコイツの顔に自分の顔が近づいていく。
頭の中で臼井陽介の言葉が何度も駆け巡る。
優真先輩にもこんな気持ち沸き上がったことはあるけど、今ほど強く、激しく感じたことはない。
ヤバい、あたし……。
臼井陽介にキスしたい――
気付けば彼の唇までの距離は、あと数センチと言うところ。
その距離を保ったまま、あたしは氷のように固まっていた。
そのまま必死で理性と本能がせめぎあう。
コイツは超がつくほどの女ったらしで。
クルミちゃんってセフレがいるようなだらしない男なのに。
なんで、あたしはコイツにキスしたいって思っちゃうの?
でも、コイツの寝顔を見てるとどうしようもなく胸が苦しくて、気が狂いそうになって。
まさか、あたし……。
認めたくない答えが眼前に迫ってきた瞬間、あたしは渾身の力を振り絞って、臼井陽介の顔からバッと離れた。
それはまるで金縛りから一気に解放されたかのようだった。
なぜか息が切れているあたし。
跳ねる心臓は相変わらずで、気付けば手のひらにもジットリ汗をかいていた。
正気を取り戻そうと、あたしは首を横にブンブン振る。
僅差で理性が打ち勝ったあたしは、必死でこの胸の高鳴りを何とか宥めようと、自分の胸に手をあてて深呼吸を繰り返した。