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ゆえとナオさん
【同性愛♀ 官能小説】

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第1話-1

(ここに、いる…)
私がその女の人を見つけたのは、引っ越してきたばかりの、小さな町の図書館でした。
(ここは図書館だから入ってもいいよね…)
私は建物に入って、迷わずに階段を上がっていきます。
三階の奥のほうに、その女の人はいました。
黒く長い髪の女の人が、頬杖をして本を読んでいます。

「あの…」
「ん?」
女の人は頬杖をしたまま、こちらを見ます。
「勉強を教えてください」
読んでいる本に、数式が見えたので、とっさに言葉が出ました。
女の人は眉だけ上げて、驚いた様子でしたが、すぐに笑顔で椅子から立ち上がりました。
「うん、いいよ。談話室に行こう」
明るい笑顔の、背の高いきれいな女の人です。私はひと目見て好きになりました。

その女の人はとても速く歩きます。身体の小さい私は、ついていくのが大変です。
「あ、ごめん。私、歩くの速いから。私、ナオ。あなたは?」
「橋本ゆえです。こんど中学一年生になります」
「私も春から大学生だから同じだね。勉強は数学でいいかな? 私、数学好きだから」
「はい。お願いします」

談話室のテーブルでノートを広げて、ナオさんが問題を書きます。
「よし、これをやってみよう」

14×12

私は縦書きで計算します。
 14
×12
_____
 28
14
_____
168

「うん、正解だね。でもこうすると簡単だよ」
14×(10と2)
14と2を足すと16
16に10を掛けると160
4と2を掛けると8
160+8=168

「あれっ?なんで?手品だ!」
「おもしろいでしょう?10×10から19×19まで暗算でできるよ」

図書館の外に出ました。
「ナオさん、ありがとうございました」
「あんなんで良かったかな?私、人に教えたこと無いし」
「とても楽しかったです。また、教えてください」
「いいよ。来週の同じ時間にしよう。家はどこ?」
「あのマンションです」
「あれ?私と同じだし」
「新学期に合わせて引っ越してきました」
「なるほどね」




ナオさんに図書館で勉強を教えてもらうのも、三度目になりました。
「ふーん、ゆえちゃんのお母さんは看護婦さんなんだね。お父さんは?」
「お父さんはいません。お母さんが、今夜お夕飯どうぞって」
「あ、いくー」

お母さんとナオさんはすぐに打ち解けました。
「一人暮らしじゃさみしいじゃない?私が夜勤のときにでも、ゆえとご飯食べてってよ」
「そうそう」
「じゃあ、夕飯頂いたら、ゆえちゃんをうちで預かって、勉強みます」
「うんうん」
「あら、助かるわぁ。ゆえ一人はやっぱり心配だったからお願いするわ。
ゆえ、ナオさんの勉強の邪魔はだめよ」
「はーい。わぁ、うれしいなー」

私は近くのコンビニにアイスを買いに行きました。
「葉子さん、気持ちは嬉しいのですが、お付き合いはできません」
「…キスしてくれても、付き合ってはくれないの?」
「葉子さんは魅力的な人です。だけど私、ゆえちゃんが好きなんです」
「…そう…。娘の大好きな人を取り上げられないわよね。
あの子、ナオさんのこと好きだから喜ぶわ。ゆえをよろしくね」
「はい」

ナオさんは上の階の自分の家に帰りました。
「ナオさんて素敵な人ね。お母さんも好きになっちゃったな」
「ね、それにとてもいいにおいがするでしょう?」
「?」
「なんだか、明るくて元気になるいいにおいがするよ」
「そうねぇ?」


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