想いを言葉にかえられなくても《放課後の音楽室》-9
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自宅の布団の上で横になりながら考える。夕飯も喉を通らなかった。
…千鶴……。
今まで曖昧だった事に初めて触れた。お互い好き同士なら、彼氏や彼女という概念を持たない。
それが彼女のルール。
俺は好きあってるなら…と思っていた。苦しい時に力になれない事が歯痒く思う時もあった。人前でイチャつきたい思いもあった。千鶴は俺の彼女だって、見せびらかしたい思いもあった。
でも、全部我慢してきた。２年も、だ。
今だって愛情の濃さは変わらない、いや…濃くなっていると思う。好きで…本当に好きで。なのに。
…俺が欲張りになっただけなのか？この不安は…この胸の痛みは…我儘なのか？
重傷だな…。ぐるぐる考え込んでいるうちに、いつの間にか俺は寝てしまった。
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翌朝、山形の婚約は冗談だったという形で広まっていた。猫をかぶっていたのは生徒に広まっていない様だ。いまだに吹奏楽部員のみが知っている、と言う事だろう。お喋りな女子部員だ、時間の問題だろう。
放課後になっても音は一切鳴らなかった。全員が音楽室に集合して話し合いが開かれたからだ。木管と金管は形ばかりだが仲直りをして見せた。黒板には決まりごとを幾つか作り、練習メニューも幾つか改善された。リーダー格の先輩方が仕切り、後は合奏を待つだけだった。
やっと音が出せる。俺はティンパニのペダルを踏み、チューニングを始めた。
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