安心院なじみの浅慮な挑発または球磨川禊の命知らずな性衝動-8
「いやはやすげーな。身体のダメージはなかったことにするとしても、僕の凌辱系スキル×100を受けて正気を保っていられるとはね」
完全院なじみがそう言って笑った。
ボロボロにされた球磨川は、壁にもたれ掛かりながら床に座り込み、立ち上がる気力もなくしたのかただ茫然自失としている。
けれども、へらへら笑ってはいるまま。
「さて、一応聞いてあげるけど、大丈夫かい? 球磨川くん」
『……大丈夫。一人で立てる』
「ならいいさ。きみの頑張りに敬意を表して一つだけご褒美をあげよう」
なじみはそう言うと、人差し指を立ててあるスキルを発動させた。
――スキルを使わないスキル『実力勝負(アンスキルド)』。
「避妊のスキル『孕孕時々(ニードノットトゥノウ)』を無効にした。もし万一できたら認知してくれよ」
なじみのふとももを、白濁液の雫が一筋伝っている。膣内から溢れた、球磨川の精だ。
『僕の精子じゃ無理だよ。全部劣性遺伝だ』
球磨川が言いながら、口角をあげた。
『……また勝てなかった』
*
「とまあ、ことの顛末はこんなところだ」
と、球磨川の夢の中から戻ってきたなじみは、俺に話し終えた。
俺は特に返事はしない。それは内容が返答に困るものだからというわけではなく、もともと俺はそういう生物(じんがい)なのだ。
なじみの影武者として、ただそこにいるだけの人外、それが俺だ。だから俺はなじみがなにをしようと、賢愚問わずその行動を妨げない。俺を供にしていないなじみの行動を聞くのも影武者としての役割であり、別にそれは構わないのだが。
──なじみのあられもない行為の顛末は、流石に聞いていて楽しいものは言えないな。
現実世界では封印が解けていないなじみは、白髪とマイナス螺子で大分印象が変わっている。まったく、いくら生存が得意な全知全能とはいえ、敵の初撃を避けない悪癖もなんとかならないものだろうか。
「さあ、行こうか半纏。スキルは使っていないけれど、そろそろこの封印も弱まり始める予感がしてきたぜ」
促されて俺はなじみに続いて移動した。
そういえばもう一つ、できればやめてほしいことがある。
──『腑罪証明(アリバイブロック)』。ついていく方の身にもなってほしい。