白黒-3
「なあ、浮気してんだろ?」
早坂さんは私の服を脱がせながら、そんな事を言った。
「…してないよ」
私は早坂さんの腰に手を回しながら言う。
「あんだけ遊んでた奴がいきなり遊び止めれるわけない。」
「止めれるよ。晃佑さんのこと好きだもん」
そういうと早坂さんは満更でもない顔をして、深く、キスをした。
ユウトさんと会った次の日に、恋人と会っても、平気な顔をして、そんな事を飄々と言ってしまう。
「罪な女だねー」
しょうちゃんは電話口で笑った。
「…だって、浮気してないんだもん。」
「え、まさかの現実逃避?」
「浮気って、気持ちが浮わついてる人がするんでしょ。
私の気持ちは彼氏から動かないから、浮気じゃないよ。」
そういうと、流石に呆れたようにため息をついて、
「そういうの、日本語で屁理屈っていうのー」
としょうちゃんは言った。
「…違います、事実っていうんです。」
「…そうですか。知りませんでした。
てかさー、俺とは何でしてくれないのー」
しょうちゃんは不貞腐れたように言う。
かつて、しょうちゃんとも体の関係があった。
しょうちゃんは二枚目だし、セックスも上手だし、私なんかのセフレにしておくには勿体無い人だ。
ただ、どうやらしょうちゃんは私に好意を持っているらしい。
11月の終わりに好きだと、いわれた。
そのあと、なんとなく触れないようにしていたら、しょうちゃんも話題に出さず、うやむやになってしまった。
「しょうちゃんとは話すだけで楽しいからだよー」
私は出任せを言う。
本当はセックスしたら、何かを白黒つけなきゃいけなくなりそうで逃げていた。
白とか黒とか、そんなはっきりしたものは、怖い。
私は自分の気持ちとか、他人の気持ちを直視しないように、
相変わらずだらしなく生活している。
「まじかーやったー」
しょうちゃんの言葉の端にある腑に落ちない感じも、私は意図的に見落とした。