隠し事-9
その夜、カリーはソワソワしていた。
スランに今夜付き合うと約束したが良く考えたらゼインにも夜にしろとか言った気がする。
先に約束したのはゼインだが、スランとの取引の方が大事だ。
「あ〜のさ……」
カリーは言いにくそうにゼインに話かける。
「ああ……あの男に誘われてんだろ?」
「へ?」
何で知ってるんだろう、とカリーは首を傾げた。
「何か知んねぇけど「誘っていいか」ってわざわざ聞きにきた」
いったいスランは何をしてるんだ、と頭を抱えそうになるカリー。
「何て答えたの?」
「あ?お好きにどうぞって」
「あ、そう」
別に期待して無いが少しぐらい動揺してほしい。
恋人じゃなくてもいつも身体を重ねてる相手が他の男に抱かれるかもしれないのに……引き止めるとか、嫌そうにしてくれるとか……ちょっとぐらいそういう素振りを見せてくれても良いのに。
(所詮、そんなもんかぁ〜)
カリーはため息をついて洗面所に向かう。
そのやり取りを見ていたポロはスクッと立ち上がってゼインの前に立った。
「?んだよ?」
ポロは無表情のままゼインの顔に両手を当てる。
そして、そのままゼインの両頬をつねりあげた。
「いぃってぇっ!!」
非力なのに細い指先はギリギリとゼインを痛めつける。
「痛ぇっ!!痛ぇってポロっ!!」
痛いけどポロを払い退けたりしたら確実に吹っ飛んでしまう。
ゼインはジタバタしながらポロが離してくれるのを待つしかなかった。
「なぁにぃ?何の騒ぎよぉ?」
シャワーを浴びていたカリーが洗面所から顔だけ出す。
カリーの目に写ったのはゼインの頬をつねるポロ。
「……もっとやっちゃって、ポロ」
カリーはそう言うと再び洗面所に引っ込んだ。
「馬っ……カリーっ!!ってかポロ!離してくれっ!!」
カリーの後押しを受けたポロは、全力をもってゼインを痛めつけたのだった。
シャワーを浴びて身支度をしたカリーはルンルン気分を装おってスランの部屋を訪れる。
「お待たせん♪」
ドアを開けたスランは、いかにも演技なカリーに顔をしかめて彼女の手を引いた。