隠し事-7
「忘れるな……お前は暗殺者だ」
スランの静かな声と冷たい目にカリーはギクリと固まる。
「奴らとは生きる世界が違うんだ……覚えとけ」
そう言ったスランは、ふっと表情を崩してカリーの肩を引き寄せた。
「な?!」
「所でさ、何とかして仲間にしてくんねえ?顔見られちまったし尾行しにくいんだよね」
「な、何で私がっ」
「ファンに行く事を雇い主に黙っとくってのでどうだ?」
「うう……」
スランの出した交換条件はカリー達にとってありがたい。
ファンは島国なので居場所がバレたら逃げるのが大変だ。
というか、首筋に当てられたダガーの冷たい刃が断れなくしている。
「分かったわよぅ」
「サンキュー♪」
スランはカリーの頬にキスを落として身体を離した。
(ムカつくムカつく!!)
いつかその首、掻き切ってやる、と心に誓ったカリーはゼイン達を追いかける。
それからスランは何かとカリーに絡んできた。
何も知らないゼインから見ると、ナンパ騒動でカリーが気に入った風に見えるが、実の所はカリーが余計な事を言わないように堂々と見張っているだけ。
カリーの方は不機嫌そうにそっぽを向いてスランを無視していた。
(へぇ……珍しい)
いつもは相手が誰だろうが愛想の良いカリーが嫌悪を露にしている。
(嫌がってるわりには手が出ないなぁ)
本気で嫌な時はひっぱたいて追っ払うクセにスランにはそれはしないらしい。
(……本気で嫌なワケじゃ…ねぇのか……?)
ゼインはキリキリ痛む胸に顔をしかめて、カリー達から視線を外した。
「どっか行ってよぅ」
「良いじゃねぇか。同業者と話す機会なんて滅多にねぇんだしさ……なあ、何で脱走したんだ?」
カリーは船の中心にあるカウンターでスランのしつこさにうんざりしていた。
スランは正に口説き中という体を装いながら、油断なくダガーをカリーに向けている。
カリーの方も同じくダガーを向けているのでお互い様なのだが、何とも落ち着かない。
カリーはため息をついてダガーをカウンターの上に置いた。