隠し事-18
「…くっ…そっ!!」
先程とは比べものにならない締め付けに、スランは慌てて分身を引き抜いてカリーの腹に欲望を吐き出す。
「ハァ…ハァ…ハァ……何やってんだ…俺は……」
スランはしかめっ面で呟くと、気絶しているカリーをそっと抱きしめた。
その頃、ゼインとポロは遅い晩御飯を食堂でとっていた。
ゼインはヒリヒリ痛む頬を撫でつつスープを口に運び、チラッとポロを伺う。
ポロは無表情で黙々と口を動かしていた。
(ったく……何だってんだ……)
ポロがゼインに怒っているのは分かる。
しかし、何故怒っているのかが分からないのだ。
「なぁ、何怒ってんだ?」
ゼインがポロに聞くと、彼女はチラッと視線を上げてゼインを見る。
そのアイスブルーの目に表情は無いのだが、ヒヤッとしたオーラが流れていた。
(やっと恐怖と困惑以外の感情を表したかと思ったら怒りかよ……)
次に見せるのは笑顔が良かったなぁ、とゼインは頭をガシガシ掻いた。
「なぁ……何か分かんねぇけど謝っからさ。機嫌なおせよ」
ゼインの言葉に、ポロは持っていた箸をパシッとテーブルに叩きつけるように置く。
その小さな音にゼインはビクリと肩を縮こませた。
(何でカリーを止めないの?)
ポロはゼインを見つめて口をパクパクさせる。
声が出ないのは分かっているが、言わずにはいられ無かったのだ。
ゼインはポロが言いたい事を何となく理解して、ため息をついた。
「カリーの事か?しょうがねぇだろ?アイツを束縛する権利は俺達にはねぇよ」
そうじゃない、カリーは束縛して欲しいのだ。
ゼインにだったら喜んでその鎖に縛られるだろうに、何故分からないのか……。
(……鈍感……)
ポロは視線を下げて口を動かした。
「あ?」
言いたい事はハッキリ伝えろ、と身体を乗り出すゼインにポロは首を横に振って何でもない、と伝えて食事を再開させた。
結局、2人の間にある壁を壊さないとどうにもならない。
その壁を作っているのは2人自身なのだから、ポロにはどうしようも無いのだ。
まだまだモヤモヤが続きそうだ、とポロは密かにため息をついた。
ポロが食事を再開させたのでゼインも椅子に座り直して食事を続ける。
ゼインだってカリーを引き止めたかった。
しかし、ルンルン気分で部屋を出ていくカリーを止める事は出来なかった……大体どんな理由で止めろと言うのだ?
お前は俺のだとか?俺以外の男に抱かれるなんてゆるさねぇとか?
(……言えるかっての……)
カリーが自分から離れて行くのは胃が捻切れるぐらいに嫌なのと同時に、物凄くホッとしている。
彼女をいつまでも側に置いておきたい気持ちと、早く遠くへ行ってくれという思いがせめぎあって、結局ダラダラと4年の月日が流れた。
ゼインは自分の右手をじっと見つめる。
ゼインの目には真っ赤な血が滴っているように見える、そんな手でカリーを捕らえてしまったら……ゼインはギュッと手を握って首を横に振ったのだった。