最低のオトコ-7
『……あっ………かずきっ……ダメぇ…………汚いから……ねぇっ……』
異様にたくましくなっている想像力のせいで、断片的な会話だけで、男が祐希にクンニをしようとしている光景がパッと頭に浮かんだ。
たっぷりとエッチな蜜を滲ませた祐希のいやらしいくぼみ。
それをぐいっと左右に押し開く不埒な男の手。
そしてぷっくりと充血したクリトリスに男がいやらしい舌をのばし、舌先でくちゅくちゅと転がすように刺激して……。
『………んはぁぁんっ!……あぁっ……あぁぁっ!』
タイミングよく祐希が甘い声を出すから、思わず射精しそうになって慌ててこらえた。
イきたくてシコってたくせに、反射的にこいつらのセックスでイってなるものかという奇妙な意地が芽生えていた。
前にオフィスで二人の情事を覗き見た時とは全く違う、奇妙な嫉妬心が俺を支配している。
それでも聞き耳を立てるのをやめずにはいられなかった。
「はぁっ……あっ……あっ……あっ……あぁーっ……あっ……あぁっ……あっ……あぁっ……」
小刻みにリズムをとるような祐希の喘ぎが、男の舌の動きを生々しく伝えてくる。
「あっ……も……ダメ……あぁっ……許して……ねぇっ……あぁっ……ああぁっ!ああああぁっ!!」
時折聞こえるズルズルッというすすり上げるような音が、クンニの激しさを想像させた。
『……あっ……やっ……あぁん!……はぁっ……はぁっ……あああっ!……あぁっ!』
激しさを増す祐希の声。
頭の芯はスーッと冷めているのに、祐希の色っぽい喘ぎが俺の下半身だけをいきり立たせる。
「……クソッ……」
………バカ!―――んなセックスで感じるなよっ。
いつもなんでもわかってるみたいな偉そうな口きいてるくせに……何にもわかってねぇじゃん。
パジャマ姿のまま消火器を振り回していた時の顔、ベランダ越しにいきなり怒鳴り付けてきた時の顔、オフィスにいる時の凛としたスーツ姿………。
俺の知っている祐希の顔がいくつも頭をよぎって、なんだか切なくてたまらない気持ちになった。
『……あぁっ!……もうダメぇっ……そんな……あっ……あああああっ!ダメダメぇっ!………イ……イ……イくぅっ……!!』
祐希が絶頂の悲鳴をあげた。
――――イったのか?
絶頂を告げた祐希の言葉に、俺は強く頭を殴られたような敗北感に襲われた。
ドサッ――とベッドに倒れ込むような音が聞こえ、数秒間の沈黙―――。
しかしすぐにまた、哀願するような女の声が聞こえてきた。
『あ……んんっ……かずき……ダメ……やめ……あっ……いやぁっ……待って……ねぇっ……待ってよ……あ……あぁん……うぅっ……………』
こんな状況になりながらも、まだ最後の一線を越えまいと男に抵抗しようとする祐希の涙声。
しかしそれを嘲笑うかのように、パン、パン――という男が腰を使う音が聞こえ始めた。
今まさに、アイツの欲棒が祐希のアソコを押し広げながら、ずっぷりと挿入されているのだ。
そう思うだけで股間がきゅうっと熱くなる。
『―――あぁっ……んっ……あ……あぁ……っ……』
女の感情なんか置き去りにされたまま、決められた台本のように着々と進行していく手際のいいセックス。
愛情云々というより、男のほうが既成事実を作りたいだけなのではないかという気がした。
『あっ……あぁぁっ……あぁん……あぁっ……』
そんな男の思惑を知ってか知らずか、祐希は連続して与えられる快楽に翻弄されて、もう甘い声を漏らし始めている。
『あぁっ………かずきっ……かずきぃっ……あぁっ……あぁっ』
うわごとみたいに何度も男の名を呼ぶ祐希。
その声がたまらなく色っぽくて、俺は再び、はち切れんばかりに硬くなったペニスをこらえきれずにしごき始めた。