愛欲の罠-5
柔らかな感触を楽しむ間もなく、それはすぐに離れてしまう。
残された余韻が、内側に秘められた熱を呼び覚ます。
「どうして先生は僕なんかと……」
流れた涙が、ぎこちない手つきで拭われていく。
ジーンズの股のあたりは、すでに固い膨らみで盛り上がっている。
性的な欲望を抑えてまでマヤを労わろうとする、その純粋さが憎らしい。
とうに忘れてしまった感覚に、心の奥底にある弱い部分がじんと痺れる。
自分の薄汚さが苦しい。
何の荷物も背負わずに、この子に出会えていたら。
マヤは演技を忘れて久保田の平らな広い胸にしがみついた。
「助けて……もう、嫌なの……」
その瞬間、ぐるりと天地がひっくり返った。
体の上に久保田がのしかかっている。
泣きそうなほど真剣な顔。
「本当に、僕でいいんですか?」
自分でもわけがわからないほど、涙が溢れてくる。
「お願い……久保田くんじゃなきゃ、だめなの」
「僕、先生のことが……好きです。僕が絶対に、先生を守ります」
欲しかった言葉が与えられた。
嬉しいはずなのに、悲しくて仕方ない。
そんな気持ちをごまかすように、久保田を抱きよせてもう一度キスをした。
舌を吸いこむようにして絡める。
さっき飲んだワインの味がふんわりと香った。
ひどく興奮しているようで、呼吸が荒い。
ねっとりとした感触に、背筋がぞくぞくする。
震える指が、マヤの胸に伸ばされる。
「いい、ですか……もう我慢できなくなりそうで……」
「我慢なんて、しないで」
ニットの上衣を傷つけてしまわないように、久保田がそろそろと脱がせていく。
少しずつ肌が露出されていくのは、乱暴に剥かれるよりもずっとマヤを興奮させた。
「恥ずかしい……あんまり、見ないで……」
「綺麗です、先生、すごく……」
言葉をひとつ交わすたびに、それだけで足の間が熱くなる。
ブラのホックを外されると、豊かな乳房がこぼれ出た。
大きな手のひらがそれをすっぽりと包みこみ、やわやわと壊れものを扱うかのようにして揉みしだく。
指の間に乳首が挟まり、きゅうっと締めつけられる。
「うんっ……あぁっ……」
「痛いですか? すみません……」
「ち、違うの……気持ち、いい……っ」
「ここ、かな?」
赤くなった突起をつまんで引っ張られる。
マヤは背筋をのけ反らせて声をあげた。
「先生、なんだか……可愛いですね……」
乳輪のまわりをなぞるように、舌がぴちゃぴちゃと音を立てて這う。
乳丘は手の動きに合わせて自在に形を変えていく。
特別なことをされているわけでもないのに、体の中がこれまでにないほど痺れる。
腕の中に久保田の頭を抱き、快感に身を委ねた。