執事なんです。私-1
付き合いはじめて数ヶ月のある日。
彼が私の家に来たいといった。お嬢様に許可をもらい、彼を家に招待する。
「え…?ここ、瑠奈ちゃんの家?嘘…」
驚いたような顔をする彼。それも無理はない。家と言っても普通の一軒家とは違ってかなりの豪邸だった。お金持ちのお嬢様が住んでいるような…。
「瑠奈ちゃんって、お嬢様だったり?」
「いえ、その逆ですよ」
「逆?」
「お嬢様にお使えするほうです」
「あぁ、執事さんか…って…」
ぽかんと口を開けて唖然とする彼。信じられないといった様子だった。
「あ…でも、だったらその口調もなっとくか…」
「まぁ、兄は普通にお嬢様にタメ口で接していますけどね。さて、どうぞ中へ」
家の扉を開け、彼を中に招き入れると階段を下りるお嬢様の足音が聞こえてきた。
「もしかしてこの人?瑠奈の彼氏さん」
まじまじと彼を見つめるお嬢様。彼は驚いた顔をして「この子誰?」と私に尋ねてきた。
「この方が私のおつかえする真菜お嬢様ですよ」
「あ…そうだったのか。失礼しました。お嬢様」
「あ〜えっと…そんな丁寧に接しなくていいよ。私、そんなえらくないし」
苦笑いしながらお嬢様が言う。実際、権力を持っていたのは彼女の母だった。
しかし、その彼女の母はもう亡くなっている。
「いやぁ…でもなぁ…」
「瑠奈はいつもこんなしゃべり方だから。瑠衣なんか普通にタメ口だし」
「瑠衣?」
誰?という顔で彼が首をかしげる。私の兄だということを告げると、なるほどなという顔をした。
「あ〜、双子のお兄さんか」
「うんそう。とりあえずあがっていいよ〜」
「では、お邪魔します」
なぜか玄関の前で一礼して彼は中に入った。
中を見て驚いた表情をする。
「ふぇ〜…すげぇ…俺の家の倍くらいあるんじゃないか?」
目を輝かせながら彼は呟いた。大体、初めて家に来た人はこんな反応である。