出会いのきっかけは一匹の猫でした-4
そうして、子猫の名前を決め…それから毎日私は彼の家に通うようになっていた。
ちなみに、猫の名前は歌羽(うたは)彼が歌が好きなのと、鳥が好きなのでそんな名前がついたそうだ。
毎日通ううちに、いつしか私は彼に恋をするようになっていた。
そして毎日通って。数ヶ月たったある日のこと…
いつものように、家にお邪魔して。帰ろうとしたときだった。
ふいに、彼に呼び止められた。
「瑠奈ちゃん、ちょっとまった」
「え?なんですか?」
「少しだけ…時間くれないか?数分でいいから」
そういって彼は私を自分の部屋に連れ込んだ。そこで彼は真剣な眼差しで私を見つめる。
「…あのさ、瑠奈ちゃんって付き合ってる人とか…」
「居ませんよ」
「そっか、よかった」
ホッとしたようににこりと笑う彼。なにを言われるのか想像してしまい、思わず身体が熱くなる。どきどきしながら彼の言葉を待っていると、彼はゆっくりと口を開いた。
「…俺な、瑠奈ちゃんのことが…」
真剣な目で私を見つめ「好きだ」彼はそういった。
なんとなく予想はしていたが、やはり本当に言われると緊張してしまう。
しばらくの沈黙の後、高鳴る鼓動を抑えながら私も頷いた。
「私も…好きですよ」
その言葉を聞いた瞬間、彼は嬉しそうな顔をして私に抱きついてきた。
「きゃっ!?」
「じゃあ…付き合ってくれる?」
「は、はい…」
返事をすると、彼はさらにきつく私を抱きしめた。
「ありがとう…」
「…あの…でも、本当に私でいいんですか…?」
「何だよ今更…いいんだよ。瑠奈ちゃんで」
「…ありがとう…ございます」
私がそうお礼を言うと、彼は笑って私の頭をなでた。
「にゃ…こ、子供じゃないんですから…」
「なでられるの嫌い?」
「そんなことないです…むしろ…」
「むしろ?」
「…なんでもないです」
照れ隠しに私が彼から顔を背けると、彼はくすりと笑って私の頬を突いた。
「にゃっ!」
「ぷっ…可愛い」
「な…うぅ…べ、別に可愛くなんかないです…」
「そういう反応がまた可愛いな」
「う…うぅ…意地悪です…」
「悪い悪い、俺、こういう性格だから」
悪戯っぽく笑って彼が言う。む…と頬を膨らませると、歌羽が走ってきて彼の腕に噛み付いた。
「ふー!」
「痛っ!?なんだよ歌羽!」
「…私をいじめるからです」
「あ、そういうこと?え〜…これじゃあ瑠奈ちゃんをいじりたおせないじゃないか…」
どことなくいやらしい言い方をする彼。思わず顔を真っ赤にする私を見て、彼は「何想像してんの?」とニヤニヤしながら言った。
「な、何にも想像してません!」
「ふぅん〜…その割には顔が真っ赤…」
「うぅ…」
「ぷっ…可愛い」
「か、可愛いっていうにゃ!」
「噛んだにゃ」
「噛んでにゃいにゃ!」
「可愛いにゃぁ〜」
意地悪く笑いながら私をいじる彼。
「うぅ…も、もう帰りますね」
「うん、また明日」
「はい、また来ます」
いつものように丁寧に頭を下げて、私は彼の家を出た。