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妖精トム・ソーヤの繁活
【ファンタジー 官能小説】

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酒屋の娘サキ-2

「僕が怖いの、サキさん? 僕は明日で13才になっちゃう。だから今日しかチャンスがないんだよ。それは、えーと……サキさんにも最後のチャンスだよ。いま脳溢血とか言ってたけれど、他にもサキさんは力仕事をしててあちこち悪いでしょう?そういうの修理……治療できるよ。だから僕のお願いを聞いてくれるかな」
「どうして私の筋肉痛とか関節痛のことがわかったの?誰にも言ってないのに」
「だから僕は妖精だから……その……妖精球が調べて教えてくれるんだ」
「なに……それ? 興信所みたいなもの」
「こうしんじょって何? とにかく妖精球がサキさんの名前とか場所を教えてくれるんだ。サキさんが最後の人なんだ。」
「最後って、何番目?」
「12番目……あっ……えーと……これ忘れて」
「わすれないよ。君、わたしの前に11人に何頼んで来たの?」
「……」
「さっきの匂いで、私……子供の君を抱きしめたくなっちゃった。もしかして君、魔性のものじゃない。物の怪とか妖怪でしょう? 」 
「どうしたら信じてくれるの?」
「そうね……さっき、私の体を治すと言ったよね。私のお母さんを治してくれたら信じるよ」
「お母さんは無理だよ。だってお年寄りでしょう」
「45才だよ」
「……び……微妙だな」
「何が?」
「じゃあ、それなんとかしてみるから、僕の言うこと今聞いてくれる?」
「駄目、お母さんが先」
「でも今日中でないと……、お母さんは明日でも良いけれど……サキさんは今日でないと」
「駄目……なんならこの話はなかったことに」
「待って……ちょっと考えさせてくれるかい」
「良いよ。でも今日はあと2時間しかないからね。がんばって。私もあと1時間くらいで寝てしまうし、なるべく1時間以内で結論出して」
「けっけつろんって?」
「1時間以内に返事をちょうだいってこと」
「うん」
サキの目の前でトムは消えた。サキは呟いた。
「たとえ……物の怪でも、約束さえ守ってくれれば恩の字なんだけどね」

サキが母親の様子を見に部屋に行くと、スヤスヤ寝ていたので自分も部屋に戻って少し時間を過ごしていた。
1時間が経ったので、もう諦めたのかと思いベッドに入ると、隣にトムが横たわっていた。
「な……なに!?」
「約束は守ったよ」
「お母さんが治ったの? じゃあ、確かめてくる」
「駄目……すぐにはわからないから。明日になれば分かると思う。もう逃げないで」
甘い香りがして来た。逃げようとしたが、何故か見えない壁に遮られてトムから離れることができない。
いつの間のかサキはトムを抱きしめていた。
だが、何故かトムは元気がなかった。それでも彼女が愛撫して行くうちに元気になって交合が成功した。その後、トムは言った。
「きょうはこのままここにいて良いですか?僕……疲れたみたいだから」
サキは頷いた。甘い香りはずっと続いていたが、何故かトムが可哀想になり、それ以上抱く気にはなれなかった。

翌日サキが目を覚ますとトムは消えていた。その代わり台所で包丁の音が聞こえて来た。ご飯の炊ける匂いも。サキが飛び起きて行くと、寝ていた筈の母親が起きて台所に立っていた。サキを見るとにっこり笑って言った。
「おはよう、サキ。私もう大丈夫だよ。心配かけたね」
その言葉は舌がもつれていた昨日までとは違い、はっきりした発音だった。
サキは妖精のことを言おうとしたが、その言葉を呑み込んだ。
3ヵ月後に、その母娘に妖精の子が見せられた。
その後、姿を消したが、彼らは同じような妖精の子が全部で13人いることを知っていた。
その後、妖精の子達はときどき自分の母親の前に姿を現して成長ぶりを見せたが、それも数回で終わって、消息が絶たれてしまった。
その頃から敬愛地区に妖精がたくさん住んでいるという都市伝説が聞こえてきたという。 


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