〈猛る瞳と擬態する者達〉-7
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次の日。
麻里子は出勤時間が来たというのに部屋に篭っていた。
瑠璃子と春奈はさっき家を出たというのにだ。
麻里子は、頼りにしていた八代と離れた事で、どうすれば良いのか解らなくなってしまっていたのだ。
(美津紀…文乃……駄目ね私って……)
八代以外、この苦しみを打ち明けられる人物はいない。
例え祖父に話したとしても、一昨日の言葉の堂々巡りになるのは目に見えている。
それに警察署まで巻き込んだ隠蔽を、麻里子が暴露するのは許される事ではない。
とりあえずシャワーを浴び、タオルで身体を拭いている時、携帯電話が着信を伝えた。
まだ濡れた頭にタオルを乗せたまま、麻里子は携帯電話を取って通話に切り替えた。
{麻里子さん、やっぱり昨日の事務所だったんだ!出動要請出したから早く港まで来てくれ!!}
「!!!!」
八代の興奮した言葉が鼓膜を叩き、麻里子の鼓動は爆発した。
やはり八代の睨んだとおり、あの事務所の男達が絡んでいた……麻里子は一昨日と同じく文乃とお揃いの黒のスーツを着て、自分の車へと飛び乗った。
(文乃…必ず助けるから!美津紀…あと少しの辛抱だからね!)
麻里子はシルバーに輝くクーペを駆り、あの港へと疾走していった。
これで二人を助け出せれば、瑠璃子や春奈に危険な目に遭わせなくて済む……逸る気持ちを抑え切れず、アクセルは強く踏まれていく……目指す目的地は、もうすぐそこだ。