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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈猛る瞳と擬態する者達〉-6

タラップを上って甲板に立つと、大量の原木がワイヤーに束ねられて置かれていた。
何処にも不審な点は見受けられない。
麻里子はブリッジの扉を開けて中に入り、狭くて急な階段を下り、その狭い通路の突き当たりの扉を開けた。


「………」


そこには作業員達の着替えの山と、木材を拘束する為のベルトや金具で一杯だった。
その中に、大きな木箱があったが、その中身は丁寧に梱包された香木で、二人の手掛かりとはならなかった。


数日前に此処で行われた惨劇は、微塵も感じられない。
親友や妹の叫び声を聞き続けていた鉄壁は、素知らぬふりを決め込んで沈黙したまま……凄惨な事件現場に踏み込んでいるのに、麻里子には何も伝わるものは無かった。


『何があったか知りませんが、こう度々来られちゃ迷惑なんですよね』


専務は不機嫌を装って部屋を後にすると、二人も諦めたように部屋から出て、貨物船から下りて、そのまま港を後にした。



「……ごめん。力になれなくて」


八代は済まなそうに項垂れ、麻里子に詫びた。
唯一と言っていい手掛かりは、あの港のあの事務所だけだったのだが、そこには何も“無かった”のだ。


「謝らないで下さい。まだ捜査は始まったばかりなんですから……」


麻里子は気丈にも、八代を気遣って微笑んだ。

今回の事件が数年前の失踪事件と関連性があるのなら、妹も親友も、地獄の責め苦を味わっているのは想像に難くない……早く助けださなければ、二人とも女性として再起不能に陥るはずだ……麻里子の心中が穏やかな筈はないではないか。


「言いにくいけど……俺、明日から別の事件の担当になるんだ……直ぐに解決して、麻里子さんに協力するから。それまで一人で行動したら駄目だぞ!」

「………分かりました」


消え入りそうに、麻里子は答えた……二人の刑事を纏めて失踪させられる犯罪者が、たった一人な訳がない……集団に自分一人で勝てないのは、いくら強気な麻里子でも理解していた……八代がいたから、麻里子は行動出来ていた……明日からの自分を思うと、妹と親友の“今”を思うと、胸が張り裂けそうだった……。


「……もっと範囲を拡げて捜しましょう」

『そうだな……捜査の基本は足だ』


麻里子は自分を奮い立たせるように息を吐き、車を走らせた。
同じ港の他の事務所も捜査し、人も通わぬような山道までも駆けて手掛かりを捜した……二日目も、その結果は変わらない……。





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