烏合の衆-4
「違うっスよ!俺らサクさんが居てくれるから動けるんス!」
メンバーの1人が両手を床に着いて身を乗り出した。
「そうですよ!サクさんが俺らを信じてくれるから無茶も出来るんです」
更にもう1人乗り出してサクに詰め寄る。
「アース隊長だけだったらとっくの昔に俺らクビっスよぉ」
「んだとてめぇ」
メンバーの言いぐさにアースは1人の頭に足を置いてぐりぐり踏みつけた。
そのアースの足を無意識に叩いて止めさせたサクは、メンバー達をぐるりと見回す。
「あのさ、俺ぁ新参者で良く分かんねえんだけど」
1人だけ立っていた男は最近アース隊に入隊した元冒険者のバリー。
「アースの兄貴が居なくてもこの隊は機能するが、サクさんが居なきゃ機能しねって事だろ?」
牽引力が有り、カリスマ性の高いアースが目立ちがちだが、実の所サクというサポート無しではアースは烏合の衆と変わらない。
サクの毅然とした態度と後始末で正当化されていたようなものだ。
長い事冒険者をやってて、あちこちを見てきた経験豊富なバリーの目にはサクの方が隊長に見えた。
「兄貴はシンボルだが、まとめてたのはサクさんだと俺ぁ思うけどな」
バリーは肩をすくめてアースとサクを見る。
アースは居心地悪そうに視線を反らし、サクはもう一度メンバー達を見渡した。
「……今までの様な無茶はしないと約束出来ますか?」
サクはメンバー1人1人に聞く様に視線を動かす。
メンバー達はその視線を受け止めてしっかりと頷いた。
「……分かりました……」
サクの言葉にメンバー達が色めき出す。
「サクさん!」
「それじゃあ……」
「アース隊の新隊長はバリーです」
「「…………はあぁ?」」
てっきりサクが隊長になってくれるものと思っていたメンバー達は、口をあんぐりと開けてまじまじとサクを見た後バリーに視線を移した。
「……俺?」
注目の的になったバリーは自分を指差して間抜けな顔になる。
「はい。私は今まで通り隊長のサポートという事でお願いします」
「いや、ちょっと……いくら何でもそりゃおかしいだろ?」
騎士団初心者のバリーがいきなり隊長などあり得ない、とバリーは反対した。