烏合の衆-2
「そうなるみたいだよ」
サクは膝の上で本を広げている娘を撫でながら答えるが……元気は無い。
リムはその様子を見て思わず苦笑する。
「解散が嫌ならアナタが隊長になればよろしいのに……」
簡単に言ってくれる妻にサクは盛大にため息をついた。
「あの隊はアース隊長だからこそのチームなんだよ……アース隊長に憧れたり救われたりした者達が集まっているからね……誰であろうと隊長は勤まらないよ」
サクはアースが隊長になった時に真っ先に配属された。
騎士団内では一番アースを知っているし、アースの扱い方も心得ている。
アースさえ押さえればあのチームをまとめる事も可能だが、肝心のアースが居なければ無理なのだ。
「ねえ、アナタ……アナタは何故アース隊に配属されましたの?」
アース隊の中で唯一の良心と呼ばれるサクは、特別強くもなく魔力もない全くの普通人。
「さあ?アース隊長が選んだからじゃないかな?」
そう言われみればあのチームで自分は浮いてるなぁ、とお茶を飲みながらサクは思う。
「何で選ばれたのかしらねぇ?」
「さあねぇ」
リムの疑問にサクも首を傾げるのだった。
翌日、団長室の横にある隊長室で、アースはアース隊のメンバー表を前に頭を抱えていた。
「こいつらバラけさせると全っ然役にたたねぇ……」
アース隊は個人技も出来るには出来るが、何よりも秀でているのはチーム全体の連携。
言わずとも阿吽の呼吸で動けるゲリラチームだ。
正規の訓練も受けてはいるが天性の勘がものを言う。
そんなチームをバラバラにしても価値が半減してしまう……だからと言ってひとつの隊に何人も入れるワケにはいかないし……と、アースは唸る。
「改めて見ると、本当に烏合の衆ですね」
サクはアースの横に座って配置替えを手伝っていたのだが……良くもまあこんな変なメンバーをキレイにまとめていたなあ、と感心する。
「お前もその内の1人だっつうの」
「それですよ」
「あ?」
サクはメンバー表をパシリと置いてアースに体を向けた。
アースはどれだよ?と言わんばかりの顔でパチパチと瞬きしてサクを見る。
「何で私がアース隊なんですか?」
昨夜、リムと話した事を思い出して思い切って聞いてみた。
「私は特別強い訳でも無いし、何か特技がある訳でも……ただ真面目だけが取り柄の男です。それが何故アース隊に居るのか不思議なんです」
サクの言葉を聞いたアースは呆気に取られた顔をした後、いきなり大爆笑した。
「あはははははっ!今更何だよっ?!お前、何年アース隊に居ると思ってんだ?!」
腹を抱えて大笑いするアースを、サクは憮然とした顔で見ながら言い返す。