和解-1
月曜日。
学校に行くのは本当に気が重かった。
何度サボろうかと思ったことか。
おそらく昨夜遅くの沙織からの電話がなかったら、私は学校を休んでいたと思う。
電話越しの沙織は泣きながら何度も謝っていた。
自分の軽はずみな計画で、私に嫌な思いをさせてしまったと。
沙織の謝罪を聞いたら、彼女が私を利用しているのではと疑ってしまったことが急に恥ずかしく思えた。
沙織が私のことを心配し、心から申し訳ないと思っているのは痛い程伝わったから。
そして沙織の優しさが身に沁みて、この娘と友達になれてよかったと改めて思ったから。
だからさんざん泣いて変な鼻声になっていた私は、それでも平静を装って“気にしてないよ”と言い、他愛のない話を織り交ぜながら沙織が罪悪感を持たないよう、努めて明るく振る舞った。
だから、沙織のためにも私はいつも通りの私で学校に行かなくてはいけないのだ。
◇ ◇ ◇
学校に着いて、教室に入るまでの緊張感はものすごいものだった。
わざと教室まで遠回りしたり、土橋修グループを遠目に見つけたら、隠れつつ土橋修と大山倫平の姿はないか確認したりと、かなり怪しい動きをしながら自分の教室に向かった。
その甲斐あってか、彼らと顔を合わすことはなく、目的の教室に入るとずいぶん気が楽になったと同時に一気に汗が噴き出した。
「おはよう……」
ハンカチで額を押さえていると、沙織がバツの悪そうな顔をして挨拶をしてきた。
人のことは言えないが、沙織の目は少し腫れぼったくなっていた。
「沙織ぃ、いつまで気まずそうにしてんの? 昨日電話でも普通にしようって言ったじゃん」
私がいつも通りの口調でいつも通りに振る舞っても、
「うん……」
と、まだ歯切れの悪い反応だった。
私はフゥと小さく息をついてから、
「じゃあさ、今日の帰りにマックで何かおごってよ」
と、ふざけて言ったら沙織はようやく嬉しそうな顔で、
「うん!」
と笑顔を見せてくれたので、密かに胸をなで下ろした。
本気でおごってもらうつもりはないけど、私達が普段通りに戻るにはこういう冗談も必要だったのかな、と彼女の笑顔を見つめながら思った。
沙織は自分を責めているみたいだったから特に。
こうして私達はいつものように休み時間におしゃべりしたり、一緒に雑誌を読んだりして過ごした。
ただ、いつもトイレに誘う沙織が今日は一人で行ったり、昨日の話題を口にしなかったのは、彼女なりに気を使っていたんだと思う。