〈過去を漁る黒鉄の檻〉-6
「は、離しなさいよ!!」
「卑怯者……貴方達は絶対許さないわ!!」
美津紀は少女達と同様に、手枷を嵌められて檻の中に入れられ、枷と鉄柵を鎖と南京錠で固定された。
文乃は手枷は嵌められたが、檻の中には入れられず、作業着姿の男達に捕えられた。
「……刑事の私達にこんな事して、無事じゃ済まないわよ?ここに来てるのだって皆知ってるんだから」
男達に押さえ付けられながらも、文乃は刑事らしく振る舞い、少女達の願いはまだ断たれていないと言葉に力を込めた。
車にも携帯電話にもGPS機能はついていたし、直ぐに居場所は知れる。
その事の威圧だったのだ。
『……コイツらのケータイ取り上げたら、後はいつも通りに捨てろ……あと、車の内装の備品を外して、別の車のナンバー付けてスクラップにしちまえ』
「!!!!」
そうだ……少女達も携帯電話は持っているし、それを処分しなければ犯罪は直ぐにバレてしまう……GPS機能を持つ備品をバラバラにされ、ナンバープレートを変えられたら、移動車両を確認するNシステムでも後を追えない……携帯電話を奪われ、それを手にした作業着の男は消えた……格闘の最中に掻いた汗は冷や汗に変わり、文乃と美津紀の表情から余裕が失せた……。
『……こうなりゃ早く出航した方がイイな……』
「……や、止めなさい!!船を動かすなんて……!!」
ゴロゴロと錨の付いた鎖を巻き取る音が船室に響くと、重なるようにエンジン音が鳴り響いた……少女達は一斉に泣き崩れ、船の放つノイズが掻き消されていった。
「こ、こんな事って……エンジン止めろ!!船を止めろぉ!!!」
慌てふためいても、もう遅い……文乃と美津紀の叫び声は船室に響くのみで、頑強な船体を突き抜けるほどの音量は無い……二人の刑事と数人の少女達を乗せた貨物船は、湾内を越えて外洋へと往き足を早めた……。