第三章 肛虐の宴-9
「奥さん、早く戻ってきなさい!」
元の部屋から聞こえてくる大村の声。
憂いた眼を真っ赤にさせながら、美優はその声のほうをきつく睨みつけた。
綺麗な眉にキリリと力を込めたその美貌には、何か強い決意みたいなものが滲んでいた。
「奥さん、ここに座ってもう一度メス犬のポーズを取りなさい」
トイレから戻ってきた美優に、大村は顎を動かしながら命令した。
「嫌です!」
「はあ? なに?」
「嫌だと言ったんです!」
美優が、怒りをあらわにしてスタスタと大村の前を横切っていく。
「おいおい、何をしてるんだ……?」
大村の言葉を無視し、脱ぎ捨てていたパンティを躊躇いなく美脚に通した。
「どういうつもりかね?」
「大村さん、私はもうこれ以上の屈辱には耐えられません。写真とネガは好きなようにしてください」
ブラを手にしながら、美優がキッと大村を睨みつける。
「旦那さん、間違いなく路頭に迷うよ。それだけじゃない、旦那さんのいた党もガタガタになる。それがどういう事か、あんたには分かっているのかね?」
「分かっているつもりです。でも私、覚悟を決めました。相手の方にも出てきてもらい、きちんと釈明してもらいます。最悪のシナリオも……もちろん考えています」
そう言いきって、美優は涙ぐんだ。
「あたた……奥さん、あなたね〜、これはもう写真がどうのこうのって話じゃないんだよ? それに、この飛び火は奥さんや旦那さんだけじゃ済まないよ?」
大村があきれたように言い、のっそりと起き上がってから何気にテレビのスイッチを入れた。
そして、ごそごそとDVDレコーダーを弄りながらポンッと大袈裟な仕草で再生ボタンを押してみせた。
「奥さん、これを見て何とも思わないかね?」
ブラを嵌めていた美優が、テレビから聞こえてくる声にハッと顔を向けた。
「な、何これ……? なぜ……ど、どうして……!?」
テレビ画面を見つめた貌が、サーッと青ざめていく。
「まったく気付かなかったのかね? さっきの排泄シーンも含め、奥さんとの行為はすべて録画してあるんだよ。これで分かっただろう、もう写真どころの話じゃないってことが」
「あ、あなたって人は……どこまで……どこまで腐ってるの!」
総身を震わせ、美優は蒼白な顔で怒りに満ちた眼を大村に向けた。
その眼には殺意さえ浮かんでいるようだった。