第三章 肛虐の宴-10
「おいおーい、勝手にお邪魔するよ〜!」
剣呑の空気に満ちた室内へ、突如聞こえてきた陽気な野太い声。
その声を聞き、大村の顔がニヤリと笑んだ。
「だ、誰……!?」
突然の来訪者に、美優があわてて衣服を掴む。
「やあやあ、やっとるかね? おお〜、これはこれは奥さん。うっほっほ、何とも色っぽい格好ですな〜」
横柄にドカドカと部屋へ上がりこんできた男が、縮こまろうとする美優の裸体をジロジロと見つめてくる。
紺色の作務衣に身を包んだこの男、見るからに好色そうな感じで不快極まりない。
「奥さん、こちらは漢方薬局堂のご主人で、名は張元さんだ。よく覚えておきなさい」
「や、薬局堂……」
「張元です。今日からは私もお世話になりますよ」
瞼に潰されている細い眼の玉が、美優の身体を隅々まで観察しているかのようにクリクリと動いている。
背は低いがでっぷりと肉のついた巨漢の体。
テカテカとした頭には一本の毛も生えておらず、垂れさがっている大きな眉毛に腫れぼったい眼、それにタラコのような唇が何とも不気味な雰囲気を作っている。
いきなり現れた張元にじっとりと見入られ、美優は何が何だか訳が分からずガタガタと震えた。
「で、どうですか? もうアッチのほうは拡張したんですかな?」
「いや〜、それがまだなんですよ。奥さん、思った以上に強情でね」
「ほほう、大村さんが手こずるとは珍しい事もあったもんだ。じゃあ、浣腸もまだですか?」
「浣腸はたったいま済ませました。まだ一回ですが」
「ふむふむ、それじゃあ、まずは浣腸に慣れさせますかな?」
「ええ、そのほうがいいでしょうね」
二人の恐ろしい会話に、いっそう怯えながら大村のほうに顔を向ける美優。
何がどうなっているのか、また、この二人がこれから何をしようとしているのか、全く解らない。
美優は、身を戦慄かせながら恐る恐るワンピースを着始めた。
もうこの場から逃げることしか頭にはなかった。
「あ、おいおい、何やってんだ!」
大村が慌てて美優の側へ駆け寄り、強引にワンピースを引ったくって投げ捨てる。
「奥さん、いい加減に自分の置かれている立場を理解しなさい!」
「た、立場って……立場って何ですか!」
大村と張元の鋭い眼にジロリと睨まれ、怒りに満ちていた心がじわじわと萎縮していく。
しかし、心が萎縮しているのにはもう一つ理由があった。
浣腸を施される間も、排泄をしている間も、また、こうして二人の淫獣に睨まれている最中も、ずっと膣壁の表面にムズムズとした痒みが走っている。
その痒みが熱を発し、妖しい快楽をじんわりと生み出しているのだ。
それは広域にまで広がっており、いまや臀部一帯が焦れるような痺悦感に蝕まれていた。
死をも覚悟した強気の態度―――
そんな思いも、いまではメラメラと灼ける官能に負けそうになっている。