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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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ロスト・バージン!?-8

「……そうか」


あたしの答えを聞いた臼井陽介は、ベッドからスッと立ち上がるとピョンと降りた。


何をするんだろうと、彼の後ろ姿を目で追っていると、奴はテレビの前にしゃがみ込んで何やらゴソゴソ音を立てている。


そして、クルリとこちらを振り返ると、あたしの座っている前にボスッと何かを投げてきた。




「……これ」


あたしが手にとったのは、分厚く重い、カラオケで使う歌本だった。


突拍子もない行動に目を丸くして臼井陽介の方を見ると、彼はイタズラっぽくニッと白い歯を見せ、


「散々泣いたんなら、今度は声が枯れるまで歌おうぜ。

思いっきり叫べば、きっとスッキリするぞ。今日はオールでカラオケ大会するからな」


とあたしにマイクを渡してきた。


「ええ!?」


「外は寒いし、ここ結構綺麗だし、せっかくだから泊まっていこうぜ。心配すんな、奢ってやるから。

俺さ、こないだスロットで7万勝ったからお金持ちなんだよね。

だから食いもんも酒もガンガン頼んでいいぞ!」


豪快に笑う彼は、早速もう一つの歌本をペラペラめくりはじめていた。


唖然としながら固まるあたしを尻目に、臼井陽介はすでに手に持っていたリモコンで曲を入れ始めていた。


「ちょ、ちょっと待って……! あたし、やっぱり泊まるのは……」


あたしの言葉に被さるように流れてきた、大音量の音楽。


聞き慣れたノリのいいメロディーラインは、少し前に流行った曲だった。


あたしの声なんて聞こえてないように、臼井陽介はテレビ画面を凝視しながら、身体を小さく揺らしてスタンバイしている。


「臼井くん!」


歌が始まる前に、何とかあたしの話を聞いてもらおうと必死で大きな声を出した。


気持ちは嬉しいけれど、ここはラブホテル。


何もなかったとは言え(いや、実際は少しあったけど)、彼氏でもない人とこういういかがわしい所で一夜を過ごすのはいかがなものか。


あたしの中の理性が、なんとか彼を止めないとと躍起になっていた。




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