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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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ロスト・バージン!?-7

彼が座った重みで、身体が少しバランスを崩しそうになってしまった。


そんなあたしを意外にもコイツが支えてくれたから、あたしはびっくりして奴の顔を見上げた。


しばらく見つめあっていたあたし達。


やがて先に動きを見せたのは臼井陽介の方で、さっき大学の構内でしてくれたようにあたしの髪をそっと撫でた。


それはさっきの愛撫とは比べ物にならないほど優しくて、心地よくて、ついうっとり目を閉じてしまうほど。


喉を撫でられる猫のように、あたしはじっと臼井陽介にされるがままになっていた。



やがて、彼はゆっくり口を開く。


「……俺はな、ヤれなくて怒ったわけじゃねえ」


その言葉にピクリと反応したあたしは、ゆっくり彼の顔を見た。


「ずっと大事にしてきた身体を一時の気の迷いで傷つけようとしたことにムカついたんだ。

そんなの、お前らしくねえじゃんか。

自棄になってたからって、好きでもない男に抱かれようなんて、似合わねえ真似すんなよ」


それは、小さい子に絵本を読み聞かせるような優しい声に変わっていた。


「…………」


「せっかくここまで自分の身体を守ってきたんだから、初めては本当に惚れた相手のためだけにとっとけ。わかったな?」


また、涙が溢れてくる。


コイツは、あたしが道を踏み外してしまわないように、あたしを心配してくれてたから、あんなに怒ってくれたんだ。


「……ひっ」


あたしが両手で鼻と口を覆い隠して泣いていると、臼井陽介は撫でていた手に力を込めてあたしの頭をグシャグシャにした。


「……まあ、彼氏が浮気してたってのはショックだろうけどな。

でも、ヤる前に本性がわかってよかったんじゃね?」


「……ん」


「ついでに言うと、付き合ってもいないチャラい男に無理矢理ヤられなくてよかった、よな?」


彼は、いつの間にかあの憎たらしいニヤケ顔を作っていた。


その言葉にカアッと顔が赤くなる。


臼井陽介は自虐的にそう言ったつもりだろうけど、あたしにはさっきの自分の言動をほじくり返されたような気がしてならなかった。


「……で、これからお前はどうすんの?」


臼井陽介はあたしの頭から手を下ろすと、自分の耳の後ろをガリガリ掻きながらそう訊ねてきた。


「何が?」


「だから、彼氏のことだよ。ソイツのこと許してもう一度やり直すのか?」


彼に言われて、今置かれている状況に決断を下さなければいけないことに気付く。


大好きだった優真先輩。


キスしたあとのはにかんだ笑顔。


あたしがセックスを拒んだ時に見せる、寂しそうな笑顔。


紗理奈先輩とあたしのことを笑っていた声。


あたしが全て聞いていたことを知ってしまった、焦った顔。


腕を掴まれた時に一気に沸き起こった嫌悪感。


いろんな優真先輩が頭の中でぐるぐる回る。


大好きだったけど。あたしにも悪い所はたくさんあったけど。


でも、バージンを捧げるのはきっとこの人じゃない。



自分の中で答えを見出だしたあたしは、首をゆっくり横に振った。


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