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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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望み-6

「う…るせぇ……」

 背中の荷物とポロを守る為に、体の正面から着地したゼインは両手をついて体をギギギと起こした。
 ポロは慌ててゼインから降りて彼を心配そうに見る。
 暫くすると騒ぎを聞きつけた街の人達が集まり、遠巻きにゼイン達を眺めた。

「あ、あんたらどこから来たんだい?」

 勇気ある街人がゼイン達に恐る恐る話しかける。
 地面に降り立ったカリーは手首を動かしてワイヤーのフックを木から外した。
 ワイヤーはしゅるしゅると自動的に巻き取られ、カリーの手の中に納まる。

「アートンの街から真っ直ぐ来たのよん♪ここはゴイスの街でいいのかな?」

 振り向いたカリーは可愛く首を傾げて街人の質問に答え、ついでに自分達の居場所が正しいのかも聞いた。

「ああ……ここはゴイスだが……え?あの谷を越えたのかい?いったいどうやって…?」

「いや、それよりアートンって事はワクチンか?!」

 様子を見ていた街人が始めの街人を押し退けて聞く。

「ああ、ワクチンはここだ250人分あるってよ」

「250?!ありがたい!!直ぐに診療所の方へっ!!」

「はいよっと……ポロはカリーと居ろよ?」

 街人の言葉にゼインは立ち上がり、ポロの頭を撫でてから先に立った街人を追いかけた。
 ポロは素直にカリーの元へ行き、ゼインの背中を見送る。

 診療所は正に戦場だった。
 小さな場所に所狭しと寝かされた患者は殆どが子供。

「頑張って。ワクチンが届いたら大丈夫だから」

 泣く元気も無く、ぐったりして浅く呼吸をしている子供達に女性が語りかけていた。

「先生!!ワクチンが届きました!!」

 入り口のドアを開けた街人がゼインが入り易いようにドアを押さえながら叫んだ。

「本当?!良かった……直ぐに飲ませて!!」

 女性はホゥッと安堵のため息をつくと、直ぐに表情を引き締めて指示を出す。
 ここに寝かされている子供達を街人に任せた女性は、街中の各家を回る為に診療所を飛び出した。
 何か手伝おうかとも思ったが逆に邪魔になりそうなので、ゼインは診療所の外に出る。

「ああ!ちょっと!そこの小さい人!!」

「ん゛あ゛ぁ?」

 腹のたつ呼び方にゼインはビキッと青筋をたてて振り向いた。
 そこには診療所に居た女性が馬に乗って鞄を2つ持っている。

「さっきワクチン届けてくれた人よね!ありがとう!本当、助かったわ!!」

 女性は馬の上からゼインに話しかけ、本当に嬉しそうに笑った。
 茶色の長い髪と同色の目がキラキラしている、希望に溢れた笑顔だ。


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