望み-4
「イェーイ」
歓声を送るカリーに、ゼインは両手を上げて体操の選手のようにピシッとポーズをとった。
ポロは驚きのあまり、へなへなと座り込む。
その間に、ゼインはロープをピンッと張って向こう側の木に結びつけた。
「2ば〜ん、カリー行っきま〜す」
今度はカリーが手を上げて宣言し、ブーツと靴下を脱いだ裸足の脚を張られたロープに乗せる。
「!!!!!」
カリーはブーツを持った両手を横に広げてロープの上をひょいひょい進んで行く。
谷底から吹く風にあおられてバランスを崩しつつも、カリーは1分もしない内に向こう側に辿りついた。
「イェーイ」
向こう側でハイタッチをする2人を、ポロは変なものを見るような眼差しで眺める。
ゼインは奴隷時代にかなりの肉体改造を受けており、驚異的な身体能力を持っているのでこれぐらい朝飯前。
だからと言っていきなり目の前でこんな事を披露されても、ポロには対応出来ない。
「は〜い、3ば〜んポロぉ」
カリーの声にポロはブンブンブンブンと激しく首を横に振った。
ゼインも驚きだが、カリーの身の軽さも異常だと思う。
あれだけ大きな胸とお尻をしているくせに、どうやったらあんな身のこなしが出来るのか……言っておくが、ひがんでいる訳ではない。
「嘘嘘。俺が抱えてくよ」
気がつくとバスタードソードと荷物を降ろしたゼインが目の前にしゃがんでいた。
どうやらまた跳んで戻ってきたらしい。
抱える……と言う事はゼインと共にこの谷を跳び越えるという事で……そこまで考えたポロは青くなって更に首を横に振る。
「大丈夫だって、見てたろ?荷物も置いてきたしお前1人増えても変わんねぇっつうの」
ゼインはポロの顔を覗き込んで首を傾げた。
「それとも何?俺が信用できねぇ?」
ゼインの蒼い目は真っ直ぐにポロを射抜く。
ポロがおずおずと首を横に振ったのを見て、ゼインはニカッと笑った。
まるで悪戯っ子のような笑顔……この笑顔を見た時のカリーはいつも嬉しそうだった……確かに、この笑顔は可愛い。
「一応、命綱もつけるから大丈夫。俺を信じろ」
ゼインはポロの頭に手を置いてシルバーブロンドの髪をぐしゃぐしゃにする。
そうして立ち上がり木に結ばれたロープをほどいてポロの腰に巻いた。