望み-3
３人が出会ってから正確には３週間たっている。
出会ったその日に命を狙われたりしたが、その後は音沙汰無しだ。
これからどうするか考えた結果、まずはポロの枷を外す事になった。
試してみた所、金鋸や物理的なものでは切れない事が分かった。
何故分かったかと言うと、力づくで壊そうとしたゼインに電流が流れて暫く動けなくなったからだ。
多分、魔法がかけられているのだろう。
そんな訳で、これを解除出来そうな魔法使いを捜す事になったのだ。
「次に行く街に魔法使いが居るといいな」
ゼインは道無き道を進みながらポロに話す。
それはそうなのだが、魔力を持って産まれる人自体少ないのに魔法使いなんてそう簡単に見つかるだろうか……そもそも、魔法使いが居たらこんな冒険者に大事なワクチンを運んで貰う訳が無い、とポロは思った。
「ゼ〜イン！」
その時、先の様子を見に行っていたカリーが木の上からストンと降りてきた。
「カリー、どうだった？」
「話に聞いてた通り、ちょっと先に深い谷があるよ。そこを迂回するにはかなり遠回りになりそうね」
身軽なカリーは今日も露出度の高い服。
体にフィットする素材の黒いハーフトップにデニム生地のマイクロパンツ。
薄い金髪はポニーテールでいつもの黒いシュシュがついていて、もう一つ左手首についていた。
「やっぱそこが問題かぁ」
その深い谷のせいでかなり迂回しないと目的地に着かない。
迂回すると１週間、直線で行くと１日……そこを１日で行けるなら、と依頼を受けた。
「どうだ？」
「行けると思うわよぉ？」
２人はニヤリと笑い合って再び歩みを進める。
その様子を見ていたポロは、ゼインの背中でゾワリと全身に鳥肌をたてた。
この２人がこういう笑いをする時、大抵ろくでもない事が起きる……この２週間程で良く分かったポロは、無事に事が済みますようにと祈らずにはいられなかった。
荷物とポロを降ろしたゼインは深い谷の淵に立って底を覗き込む。
その彼の髪が、谷底から吹く風に煽られて逆立った。
「おお……凄ぇなぁ〜底が見えねぇや」
軽く口笛を吹いたゼインは足元にあった石を蹴り落とす。
「……音がしねぇし……落ちたら死ぬな」
ゼインは何が楽しいのか、喉で笑って向こうの崖に視線を移した。
「２０メートルってトコか？」
「１８だと思うけど、２０見といた方がいいわね」
カリーはロープを近くの大きな木に巻き付けてしっかり結びつける。
「おっし！ちょっと離れとけよ」
カリーが結んだロープの反対側を持ったゼインは、荷物とバスタードソードを背負い直して１５メートル程下がった。
「ゼイン！いっきま〜す」
ピシッと片手を上げて宣言したゼインは、いきなり全速力で走り出す。
「っ！！！？」
まさかこの谷を跳び越えるつもりか、とポロは驚いて両手で口を押さえた。
ゼインは谷のギリギリでおもいっきり踏み切り、高く跳び上がる。
ゼインが踏み込んだ地面はボコリとへこみ、少し遅れてポロとカリーを衝撃波が襲った。
２０メートルの距離を軽々と越えたゼインは、向こう側の地面にズシャッと着地する。