望み-12
「よっと」
ゼインはそこにカリーを降ろし、ポロが布団を被せた。
奴隷2人の連携はバッチリだ。
「よっぽど嬉しかったんだろな」
ゼインは喉の奥で笑い、スヤスヤ眠るカリーの顔にかかっているクルクルパーマの髪を掻きあげる。
「?」
街が助かった事だろうか、とポロは首を傾げた。
「お前が抱きついた事だよ」
ゼインの口から出た言葉にポロは目を丸くする。
ポロにはとても勇気のいる行動だったが、普通の人にとっては正に普通の事なんじゃないのだろうか?
「カリーは……多分そんなにキレイな女じゃない」
普段はおちゃらけているが、戦いになると躊躇無く相手の命を奪う。
それが魔物だろうが人間だろうが関係無い。
『敵』と判断したら容赦無しだ。
「だから、命を奪う以外の事で人に触れるのが好きなんだ」
何かにつけてハグしたりするのはそのせい。
「こいつの腕ってさ……暖っけぇよな……」
独り言のようなゼインの言葉にポロは同意して頷いた。
(カリーが好き?)
カリーに聞いたのと同じ事をゼインにも聞いてみる。
ゼインはポロの言いたい事が何となく分かるらしく、ジェスチャー無しでも理解してくれる。
ゼインは少し考えてクスリと笑う。
「……そうだな……俺にとって特別な女は4人居るんだ」
「?」
質問とは違う答えが返ってきたが、ゼインが自分の事を話すなんて滅多に無いので黙って続きを待った。
「1人は俺を殺そうとした女」
覚えていないが、何かの時にかち合って戦う事になった暗殺者。
「結局、負けたけどな……凄っぇ綺麗なルビー色の目でさ……まあ、黒ずくめで目しか見えなかったんだが……こいつになら殺されてもいっかなって思った」
負けたくせに何でまだ生きてるんだろうか、とも思ったが続きが気になるポロ。
「後、3年くらい前に一緒に旅した女」
カリーが言ってた『ゼインが好きになった女性』だ。
ポロは思わず身を乗り出す。
「西の大陸で会って……1年ぐらい一緒に居たかな……背が高くってすらっとしてて……」
ここでゼインはぷっと吹き出して笑った。
「初めは男だと思っちまうぐらい口が悪くて、無茶苦茶強かった」
カリーでも勝てなかったとゼインは笑う。
「でも、夢でうなされる事が多くてな……何度か……まあ……あっちが望んでっつうか……」
ヤッたんだな……ゼインは言葉を濁したがポロには分かった。