望み-11
「新しい宮廷魔導師はかの有名な魔法学校の学長もしててね……教え子達が会いに来たりもするから南より断然良いと思う」
「成る程……」
運が良ければ魔導師に会えるかもしれない。
ゼインはファンに渡る決心をするが、問題がひとつ……船賃が高いという事。
顎を手に置いて考え込むゼインをポロが申し訳ないように見上げ、ゼインの服を握ってちょっと引く。
ゼインが目を向けると、そこまでしなくても良い、とポロは首を横に振った。
「気にすんな」
ゼインはポロの頭をぽんぽん叩きながら再び考えにふける。
それを見たフローは、横でポンっと手を打ち合わせた。
「あ!良かったらチケットあげるわ!」
「は?」
チケットとは何だ?とゼインはフローに目を向ける。
「年に1回、ファンで学会があるんだけど行ってないからチケットが貯まってるのよ」
医者の世界には医師協会なるものがあり、年に1回集まって情報を交換する。
学会が開かれる時は案内状と共にファンまでの船賃無料チケットがついてくるのだが、ここら一帯の医者はフローしか居らず留守に出来ないので何年も行ってない。
「チケットに有効期限は無いし、5枚ぐらい余ってるから」
「……売れば良いんじゃね?」
そんな貴重なチケットは売った方が良いと言うゼインに、フローは吹き出した。
「今回の報酬よ!受け取って」
フローはゼインの肩を叩いてグラスを傾ける。
「報酬なら充分貰って……」
「照れ屋も程々にしないと可愛くないわよ?おチビちゃん」
「んだと?!やぶ医者!!」
「言ったなあ?」
憤慨するゼインに向かってケラケラ笑いながら言い返すフロー……完全に遊ばれているゼインに、周りの人達も爆笑するのだった。
夜がふけて飲み会もお開きとなり、街の人々は我が家へと帰っていった。
「ふにゅう〜」
大分酔っ払ったカリーはゼインにおぶわれて部屋に移動中。
「ったく……飲み過ぎだっつうの」
「んにゃあ〜自分よりちっさい男におんぶされる屈辱〜」
「落とすぞ、てめぇ」
ぐでんぐでんのクセに口だけは減らないカリーに文句を言いつつ、ゼインの口元は笑っていた。
ポロはゼイン達より先に行ってドアを開け、カリーが寝やすいようにベットを整える。