恋愛戦隊ラブレンジャー-7
−二人でシートに座りながら事情を説明した。話によると、ココの代表の方は、リーダーの学生時代の先輩で、その絡みからココを使わせてもらってるらしい。
『へぇ…じゃ、杏子ちゃんも体力作りの為にココに来たんだ。』
『はい。もう、明らかに運動不足ってのが分かりました。』
少しドキドキするが、比較的落ち着いて話が出来てる。
『でも、偶然って恐ろしいよね。こんなとこで会うなんて、想像もしてなかったよ。』
『私だって。いきなり声かけられて、ビックリしましたよ。』
笑顔で話す二人。端から見たら、恋人同士に思えるだろう。ちょっとだけ、そんな事を期待する私。
『ところでさぁ…』
リーダーが口を開いた。
『せっかく同じとこでトレーニングしてるんだから、一緒に…やってみないかな…？あっ、イヤなら別に構わないんだけどさぁ。ただ、個人でやるより効率イイと思うし。それに…』
しどろもどろになってる。トレーニングしてるワケでもないのに、汗だくなリーダー。何となく笑えてきた。
『イイですよ。断る理由なんか無いです。それに、二人で励まし合ってトレーニングした方が、長続きすると思います。』
『そぉっ！ソレだよソレっ!!お互い、同じ目標に向かってるんだし。それに…何ていうのかなぁ…えっと…あのぉ…』
もはや、しどろもどろを通り越して、何を言いたいのか私にも分からなくなってきた…
『リーダー…大丈夫ですか？』
『んっ!?僕は全然平気だよっ！さぁ、これからの為に特訓だっ!!』
急に仕切りだした。
《でも、いつものリーダーっぽくないのも、たまにはイイかな？》
そう思いながら、二人でマシンに向かった…
−『食らえ、必殺っ!!ファイブスター・ウェーブ!!』
『…はいオッケー!!』
あれから一ヵ月。自分でも分かる。見違えるほどに体力が付いた。
始めの一週間は、かなりキツかった。毎日が筋肉痛の連続。腕も脚もパンパンだった。
しかし、リーダーとのトレーニング。お互いを励まし合い、ひとつの壁を乗り越える度に一喜一憂していた。
今では、エアロバイクを一時間続けても問題ない。オマケに、以前はビクともしなかった20kgのベンチプレス。それが40kgまで持ち上げる事が出来る様になった。
『最近、力強くなったんじゃねぇの？』
慎二君が話し掛けてきた。
『そぉ？一応、トレーニングはしてるけど…』
『筋肉、付いてきた感じするよぉ！』
私の腕を触りながら、亜希ちゃんが言った。
『みなさん、それ相応の結果が出てきたみたいですね。』
拓磨君の言う通りだ。リーダーもアクションにキレがあるし、亜希ちゃんもスタント無しでアクロバティックな動きをする。
事実、私の方も顕著で、素振りの成果なのか剣を使うアクションシーンなど、動きに軽快感が出てきた。
『でも、みんなはイイよなぁ…俺なんかまだ、ソレっぽいシーンの撮影なんかした事ないし…』
慎二君や拓磨君の強化面はドライビングテクニック。しかし、二人が中心になっての撮影はまだ無い。
『そんなに焦る事はないぞ。日頃の積み重ね。それを行なって待つんだ。そして、出番が来たら一気に…』
リーダーが声を掛けた。しかし、自分のシーンがないのは焦りに繋がる。そして、何かとんでもない事が起きるのでは…
私の悪い予想。なぜか当たってしまう。そして、危惧していた事。それが現実になった…
−『どうしてなんすかっ!?』
『どうしてもだ。』
『そんなの答えになってねぇっすよっ!!』
『お前等に言う必要などない。』
ミーティングルームに怒号が響く。月に一度の全員参加の会議。その時の事だった。
『僕達だって番組作りに参加してるんです。何故、意見を取り入れてくれないんですかっ!?』
『お前等一人一人の意見を聞いてたらキリがないだろ。それに、その発言は脚本に不満があるって意味にも取れるが？』
意見交換の場は険悪なムードに包まれていた。
『主役はヒーローとロボットなんだっ！お前等なんかなぁ、刺身のツマなんだよっ!!』
ディレクターの一言。気が付いた時には遅かった。
…ガタガタッ！
『テメェっ！言ってイイ事と悪ぃ事があんだよっ!!』
慎二君が掴み掛かった。
『お前っ！こんな事してタダで済むと思ってるのかっ!!』
『知るかよっ！』
…ガタガタッ！
みんなが止めに入る。興奮して見境がない慎二君。テーブルや椅子が散乱する。
『止めるんだっ!!』
リーダーの一喝。そして二人を分ける。
『皆さん、申し訳ありませんでした。彼には僕からキツく言っておきます。ですから、今回は…』
しかし、それでは納まらないディレクター。
『お前なぁっ！俺が何されたか分かってるのかっ!?絶対に許さないからなっ!!』