ダブルデート-8
「まあ、そういういきさつで付き合うことになった。でも、もともと好きじゃなかったから長続きしなかった。そんだけだよ」
最後に土橋修はそう言って話を強引に終わらせると、よほどお腹がすいていたのか、割り箸をパチンと割ってかきこむようにご飯を食べ始めた。
沙織や大山倫平も料理が目の前に来ると、それ以上深く詮索することなく、いそいそと食事を始めた。
でも、私だけは料理に手をのばさずに膝の上でグッと拳を握りしめていた。
―――好きじゃなかった。
土橋修の何気ない一言が私の頭の中でずっと繰り返される。
握る手が震え、半開きの口は喉がやけに乾く。
そして私は腹の底から絞り出すように低い声を出した。
「……好きでもないのにやることはやっちゃうんだ」
私はじっと土橋修を睨みながら言った。
沙織と大山倫平はギョッとした顔で、割り箸やらフォークを持つ手を止めて、私を見た。
「……あ?」
土橋修は乱暴に箸と茶碗をトレイに置くと、今まで見せたことのなかった冷たい目で私を睨み返した。
……こ、怖い!!
その視線が怖すぎて、私はゾクッと鳥肌が立ってしまったけど、それでも震える声でさらに続けた。
「好きでもないくせにエッチだけして一方的に振って、そんなの郁美がかわいそう過ぎると思う……」
「なんだ、あんた郁美の友達かよ」
「……そうだけど」
土橋修は一瞬気まずそうな顔を見せたが、すぐにハッと小さく笑って、
「別にあんたには関係ねぇだろ。それに終わった事、グチグチ言わないでくれねえ?」
と言い放った。
「……郁美の中では終わってなかったよ」
土橋修の凍りつくような視線から逃げ出したくなったが、テーブルの下で汗ばんだ手をジーンズに拭いながら、なんとか絞りだすような小さな声で言った。
沙織も大山倫平も、食事に手をつけることなく、黙って下を向いている。