ダブルデート-6
「別に、そんなの気にしたことはねえよ。ああ、でもやたら少食なヤツは苦手だな、一緒に飯食った気がしねえ」
土橋修はテーブルの上のお冷やをグイッと一口飲んでから言った。
「郁美さんと別れたのってそのせい?」
大山倫平の言葉に私はピクリと反応して、土橋修のお冷やを持つ手に視線を向けた。
骨ばった指が一瞬ピクッと何かを言いたそうに動いた。
「そんなくだらない理由で別れるか、アホ」
土橋修は呆れた顔で大山倫平を見てため息をついた。
「ねぇ、何の話?」
沙織が興味深そうに話に割り込む。
「ああ、修の元カノの話だよ」
「おい、倫平……」
土橋修は大山倫平に何か言いたげな顔を向け、その話題を避けたがっているように見えたけど、
「いいじゃない、聞きたい聞きたい! どんな娘だったの?」
と、興味津々といった様子の沙織に言葉を遮られていた。
「すっげー可愛い娘だったよ。南女子高のタメで、しかも向こうから告白! なんでこんな可愛い娘が修なんかに告るんだって思ったよ」
大山倫平は沙織が話にのってきたのが嬉しかったようで、口調に勢いがついてきた。
その一方で、土橋修は頬杖をついて不機嫌そうに窓の外を眺め始めていて。
私はそんな土橋修の横顔をチラチラと見ていた。
彼がこの話題に触れることで、どんな反応をするのかが気になった。
しかし、土橋修は大山倫平がペラペラ話す内容に時折呆れた顔を見せるものの、焦りとか動揺した様子は一切なく、あとは退屈そうに窓の外を眺めているだけ。
郁美のこと、どう思ってるの?
「へぇ〜、そんな可愛い子と付き合ってたなんて、修もなかなかやるね」
一通り土橋修の元カノがどれほど可愛かったかを聞き終えた沙織は、ニヤニヤしながら土橋修を見た。
「多分あんな可愛い子と付き合えるチャンスはもうねえのに、自分から振るなんてバカだよな〜」
大山倫平も笑いながら土橋修の肩を叩く。
「うるせーな、お前ら。関係ねぇだろ、俺が誰と付き合って別れようが」
土橋修は呆れた顔でため息混じりに言い放った。
「でもさ、なんで別れたの?」
沙織が言った。
「……性格が合わなかった。そんだけ」
「どんな風に合わなかったの?」
「……もういいだろ、俺の話なんか」
土橋修はウンザリした顔で沙織を見た。
「え〜、興味あるよ! 教えてよ、できればどういういきさつで付き合ったのかも!」
しかし、沙織は臆することなくしつこく聞き出そうとしている。
「そういえば、お前から女の話って出たことねえよなあ。もっと詳しく話せよ!」
沙織と大山倫平の勢いに負けたのか、土橋修は盛大なため息をついてからポツリポツリと話出した。