ダブルデート-10
ショッピングモールからの帰り道は、あまりに穏やかで平和で。
呑気に遊びまわる子供達や、楽しそうにドライブしているカップル、どっさり買い物している家族連れなど、街は私以外の全てが楽しそうで活気があった。
でも、私にはそのすべてが忌々しく見え、この場違いな空間から早く逃れたい一心で自転車を飛ばした。
家に帰るまではなんとかこらえていた涙も、自分の部屋にたどり着いた瞬間、スウッととめどなく溢れてきた。
起きたままで布団がグシャグシャになったベッドに倒れ込み、流れる涙もそのままに、見慣れた天井をボーッと眺めた。
土橋修の私を睨む顔。
大山倫平の私をバカにした顔。
そして二人の責め立てるような冷ややかな視線。
思い出したくもないのに次から次へと頭の中に浮かんで自分を責め立てて来る。
なぜアイツにあんなことを言ってしまったんだろう。
言わなければきっとそれなりに盛り上がって、楽しめたかもしれないのに。
……いや、そんなことないか。
たとえそうだったとしても、きっと私は大山倫平にバカにされ、見下された態度をとられたままでいなければならなかったかもしれない。
その一方で沙織はチヤホヤされながら。
沙織と話すときの大山倫平の嬉しそうな顔や、私には見せることがなかった土橋修の笑顔を思い出すと、少し落ち着いていた瞳から、またジワリと涙がにじんで来た。
頼みごとなんてきかなきゃよかった。
郁美や沙織にまで、八つ当たりともとれる苛立ちや嫉妬のどす黒い感情がいつの間にか湧き上がってきた。
郁美のために土橋修と接点を持とうと頑張っても、結局怒らせてしまってセッティングどころじゃなくなるし、沙織の頼みごとであった大山倫平達と一日だけ遊ぶダブルデートも、私のせいで全て台無しにしてしまった。
自分の役立たずっぷりと、利用されていたのではと言う懸念が、惨めな気持ちにどんどん拍車をかけて再び涙が溢れて来る。
涙と鼻水でグシャグシャになった顔を、手の甲でグリグリとこすると、私は布団の中に潜り込んだ。
もはや自分がなんで泣いているのかわからないくらいいろんな気持ちが混沌としていた。
いろんな絵の具を混ぜ合わせると泥のような汚い色が出来上がるように、今の私の気持ちもそんな色になっているかもしれない。
私は、もうこれ以上何も考えたくなく、ずっと布団の中で小さく丸まり、眠りについたのを覚えてないほど静かに泣き続けた。