決戦は金曜日-3
「だって、しょうがねえだろ。かなりご無沙汰だったんだから」
聞き覚えのある声に、ピクリと身体が強張った。
え、ちょっと待って。
一瞬で全身の血の気がサーッとひいていき、今度は鳥肌が代わりにあたしの身体を埋め尽くしていった。
「だからって講義サボってまでヤるなんて、らしくないんじゃない?」
「でもさ、オレもう限界だったんだもん。彼女がいるのにできない辛さって女にはわかんねえだろうな」
心地のよい低い声。あたしはこの声が大好きだった。
だんだん状況が見えてきたあたしは、いつの間にか目から涙が滲み出ていたことに気付いた。
嘘だ。
涙がブーツの上に落ちて、黒いシミを作る。
「付き合って3ヶ月だっけ? それでエッチ無しはきついわよね。
そんな真面目だったんだ、あの娘」
「真面目っつうか……、堅物っつうか……。最初はあの純粋なとこがイイと思ってたんだけど、堅すぎるのも考えもんだって思うようになってきたんだよな。
やっぱり適度にエロい女の方がいいや」
「じゃあ、あたしに乗り換える?」
「ん、紗理奈は他にも男いっぱいいるし遠慮しとくわ。
たまにこうしてヤらせてくれれば充分」
「何それ」
あたしが外にいるのを知らずに二人は無邪気に笑い合っている。
そう言えば、あたしがゼミ教室に来れば、この二人は楽しそうに話をしていることがよくあったっけ。
あたしが入り込めない話題で盛り上がることもしばしばあって。
単なる友達だと思っていたけれど、もしかなり前からこんな関係だったとしたら……?
「それに恵の処女は絶対もらうって決めてんだ」
「あら何で?」
「だって、あんだけ何も知らねえ女なら、オレの思い通りに育てられそうじゃねえ?
お前とは長い付き合いだからオレの悦ぶポイント知ってるけどさ、何も知らねえまっさらな女をオレ好みに調教しちゃうのもまた一興だと思うんだよね」
「……ホンット悪い男」
そう言いながら紗理奈先輩も、クスクス笑う。まるで二人してあたしをバカにするみたいに。
あたしは、こんな男をずっと好きで、バージン捧げるつもりだったんだ。
嗚咽が漏れてきて、あたしはそのまま冷たい床にペタリと座り込んだまま動けなくなってしまった。