決戦は金曜日-2
エレベーターを使って5階に出る。
講義も最後の一コマのせいか、人影もまばらで閑散としている。
そんな静寂の中で生唾を飲み込んだりしてみれば、やけにその嚥下する音が響いたような気がした。
――ああ、いよいよだ。
あたしが、優真先輩の部屋に泊まりに行っていいですか、と言えば彼は一体どんな顔をするだろうか?
驚く? 照れちゃう? ヒいちゃう? それとも、喜んでくれる?
色んな優真先輩の反応を想像すると、心臓がバクバクと早鐘を打って、膝がガクガク震えだす。
でも、勇気出さないと。これを乗り越えたらきっとあたし達はもっとわかりあえるはずだから。
そう思い、ゼミ教室の前まで来るとドアノブに手をかけた。
講義が始まるまで10分もあるせいか、教室はまだ電気がついていなかった。
一番乗りなんて、少し緊張するけど優真先輩は割りと早めにここに来るのを知っていたから、先回りして講義が始まる前に優真先輩と話をしておきたかった。
気合いを入れるように息を吸い込んでからゆっくりドアノブに手をかけた瞬間、あたしの手が止まった。
――誰かいる?
女のクスクス笑う声に、あたしは思わず手を引っ込めてしまった。
薄暗い教室で、電気もつけずにいるなんて、何かよからぬことでもしてたんじゃないか、あたしはそんな予感がしたからドアを開けることをためらってしまったのだ。
逡巡してるうちに、中から女の子の声が聞こえてきた。
「もう、こんなとこでするなんて、よっぽどたまってたのね」
……やっぱり。
中で行われていた“コト”があたしの予想通りだったことに顔が赤くなる。
同時に、声の主が誰であるかもわかってしまった。
馬場紗理奈(ばばさりな)先輩。同じゼミで、優真先輩と同じ、三年生。
迫力あるナイスバディを惜しみ無くさらけ出している、ギャルだけどとっても美人な先輩だった。
あたしと優真先輩をくっつけてくれた、キューピッドでもある。
紗理奈先輩なら、こういう場所でエッチしてても、なんか納得。なんて、失礼なことを思いながら苦笑いになる。
さてさて、どのタイミングで入っていこうか。
そう考えているうちに、くぐもった男の声が聞こえてきた。