見えない利点-4
「あ、あ……あぅ……」
つま先をブルブル震わせ、サーフィは歯を喰いしばる。
埋め込まれた指は、絶頂の寸前までサーフィを追い詰めておきながら、決定的な刺激をくれない。
小さな陰核を柔らかく刺激し、あともう少しのところまで来ると、ピタリと動きを止め、それからまたギリギリまで煽り立てる。
中途半端なくるおしい熱が溜まっていく一方で、苦しさに涙が滲む。
「あっ!ああっ!!や……や……」
「どうして欲しいんです?」
すがるように見上げれば、冷たい視線と意地悪な質問。
「っ!」
身悶えするほど辛くとも、どうやって欲しいか口にするなど、考えただけで顔から火が出る。
涙をいっぱいに浮かべて黙りこくったサーフィに、ヘルマンは先ほどの玉連を見せる。
「これは、夜伽に使う玩具でしてね」
つぷん……つぷん……
半透明の淫具が、ぬめる蜜をまといながら、ゆっくり一つづつ媚肉に飲み込まれていく。
「あっ、あ、あ……」
冷たい指が、冷たい無機質な玉を押し込む。
自分の身体が温度を上げている事を、余計に自覚してしまう。
玉同士がゴリゴリ擦れ、柔らかい肉に淫らな刺激を与える。どこか違和感のある快楽。 ヘルマンの身体を受け入れている時と,似ているようで違うものだ。
全て入ると、ヘルマンが端の金属をつまみ、短い呪文を唱えた。
「っ!?あ、ああああ!!」
胎内の玉が、いっせいに微弱な振動をはじめる。
「ふぁっ!?あっ!や、中、中で、うごいて……あああっ!!」
ビクビク身体を震わせると、宥めるようにそっと髪を撫でられた。ズクンと疼いた子宮を、埋め込まれた玩具がここぞとばかりに攻め立てる。
「あ!あ、あ、や……」
無機質な異物が、魔法の振動とヘルマンの存在を借りて、違和感交じりの強制的な性感を与え始める。
「は……はぅん……」
必死で耐えようとしても、腰がひとりでに揺れてしまう。
それを見ると、両手首を押さえる手だけはそのままに、ヘルマンは身体を離してしまった。
置き去りにされたような感覚に、心臓がひどく痛む。
「気持ち良いですか?」
男の囁き声に、首を振る。
与えられる感覚は、確かに快楽だ。けれど一方的な贋物の快楽で、そこに幸せはない。
サーフィが欲しい快楽をくれるのは、世界でたった一人だけ。
「や……ヤぁっ!!これ……お願い……取ってぇ……嫌……」
耐え切れず、涙を溢れさせながら、恥も外聞もなく訴えた。
「あ、あ……貴方じゃなきゃ……」
「……」
答えはなかったけれど、ズルリと一気に引き抜かれた。
「あぅっ!!」
連なった玉に激しく打ち壁を擦られ、サーフィの喉が反り返る。
愛液で濡れ光る玉連を床に放り捨て、無言でヘルマンはテーブルからウォッカの瓶を取り上げる。
「んっ!?」
口内に、強い酒の味が広がった。
口移しに差し出された量はわずか数滴だったが、鼻腔に抜ける強烈なアルコールの香りが、頭の芯をあっというまに麻痺させていく……。
「ん、ん……ふ……は……」
口腔を余すところなく舐め上げられ、舌も吸い上げられ、喰らい尽くされる。
薄っすら目を開けると、ぼやけた視界に、心底困り果てているようなヘルマンが写った。