心の宿-1
僕は、田舎の老舗旅館で働く【アキラ】28歳。
最近は不景気で旅行客も減ってきたし暇なんだよねー
え〜っと今日の宿泊客はと…一人かあ。
ぼんやり予約表を眺めていると、ちょうどお客さんが来たようだ。
「いらっしゃいませ」
うわースゴい綺麗な人!
小柄だけどスラッとしていて、三編みと白いワンピースが似合う清楚な感じ。
なんか緊張する…
「お世話になります、○○ユミです」
優しく、でもどこか寂しげな笑顔の彼女に、僕は魅力を感じずにいられなかった。
ドキドキするけど、部屋へ案内して、お茶をいれながらいつも通りの会話をしよう…
「こちらへは、初めてですか?」
「はい、いい所ですね〜空気が良くて!」
「ホントですか!?田舎で何もないですけどね」
「私は、都会に生まれ育ったので憧れます」
「賑やかな観光地よりも、現地の人しか知らない場所なんかに行ってみたいな」
照れくさそうに肩をすくめ、ぺろっといたずらっ子のような仕草で舌を出す彼女…
か、可愛すぎるっ!
「あっあの〜僕、このあと時間あるんです…」
「もしよかったら、僕の車でドライブがてら案内しますよ!」
ヤバい、旅館の従業員がお客さんに何言ってんだろう…
「助かります〜!楽しみ!」
嬉しそうにハシャイで、両腕をあげた彼女を見ると、ワンピースのワキにうっすら汗をかいて染みが出来ている。
ドキッとした瞬間に、僕がワキの染みを見ていたのに彼女が気づいて
「えっ!あっ!イヤっごめんなさい」
顔を真っ赤にして恥ずかしがる彼女。
「いやその、何て言うか…カワイイと思います」
「えっそんなっ…ごめんなさい、なんか緊張しちゃて」
「じゃ、さっそく出かけましょう!」
勇気を出して彼女と手を繋ぐと、もうお客さんてことを忘れてた。