11月24日-1
早坂さんと付き合って、1ヶ月がたった。
もう、山の木々は紅葉を終えて散り始める頃になっていた。
早坂さんは、相変わらず多忙で、なかなか逢えず、逢ってもホテルに直行してしまう。
「なるほどーなにも変わらないわけだ、付き合う前と。」
しょうちゃんは食後のコーヒーを飲みながらそう云った。
今日は休日で、出勤前のしょうちゃんと遅めのランチを取っていた。
「なにもじゃないもん。」
少しムキになって私は云った。
「えー何が変わったのー?」
「…下の名前で呼ぶように、なった。」
「あらかわいい」
「馬鹿にしてるし…」
「してないってー」
「やっぱり難しいのかな、セフレから恋人になって、仲を深めるのって」
私は少ししゅんとして、飲んでいたカフェオレに目を落とした。
「いや、恋愛の始まり方なんて人それぞれよ。体から始まってたって、悪くないと思うよー」
「男の人にとってデートって、体の関係もつための餌みたいなものなのかな。
だから、もう私とやってるから、どこも行きたがんないのかな。」
「…世の男性に謝れ…
てか、そんな人じゃないんでしょ?」
「…なんか、分かんないよ、もう」
「じゃあ、気晴らしに俺とする?」
早坂さんと付き合って以来、しょうちゃんとはこうやって食事には来ても、セックスはしていなかった。
「…しない」
「よしよし、そうやって、彼氏想う気持ち持ってる間は、大丈夫だから。
ま、俺はいつでも話し聞くし、メシも付き合うから。」
私の頭を撫で、伝票を持ってしょうちゃんは立ち上がった。
こんないい男なのに、なんでしょうちゃんは好きにならないんだろう。
テーブルに残された私はぼんやり天井を見た。
カフェの天井では、いつかホテルで見たプロペラがゆっくりと回っていた。