puppet title-13
嫌だ!
嫌だ嫌だ!
言わないでくれ!
知らさないでくれ!
教えないでくれ!
伝えないでくれ!
分かりたくないんだ!
理解したくないんだ!
『殺人鬼』は私の天使を指してこう言う。
「ほら、この、ゴミ」
「うわああああああああああっ!」
私は催涙スプレーを『殺人鬼』の顔面に吹き付ける!
「わぁ」
効いた!『殺人鬼』は目を押さえて蹲った。
殺せる!!
近くにあるメスを引っつかんで『殺人鬼』の頭にメスを振り下ろす!
振り下ろした!
振り、下ろした…?
感覚が、無くなっていた。
右腕が、無くなっていた。
「いやだなぁ、『死体コレクター』さんは。視界を殺したくらいで、」
僕を殺したなんて思わないで下さい
左腕が無くなっていた。
右足が無くなっていた。
左足が無くなっていた。
胴体が右半分無くなっていた。
顔が右半分無くなっていた。
残った半分の胴体と顔は二つに両断されていた。
心臓が抉り出された。
もちろん意識は、とうのとっくに無くなっていた。
私は死体を集めていたわけでも、ゴミを集めていたわけではないのだ。
「全く、視界を潰されるとは思ってなかった。もしあのまま逃走を始めたら、きっと捕まえられなかっただろうな」
『殺人鬼』は人間離れした聴覚と嗅覚と触覚と方向感覚により、どうにか洗面台を見つけ出し、顔を洗って、勝手にタオルを借りて、顔をごしごし擦っている。
「うーん、やっぱり嵐間町近辺が一番『人外』が多いかな。離れてみて、分かったけど」
タオルは元通りに広げてタオル掛けに戻す。
「うーん、しかしまた外れだったな。でもまあ血の臭いがぷんぷんするところにはたいてい『人外』がいるし、慌てることはないんだろうけど」
『殺人鬼』はちゃんと玄関のドアから出て、夜の冷たい空気を吸う。
「あれ?今日の夜は暖かいな。まあ、3月も末だし。いくら春が遅いって言っても、そろそろ暖かくなってくるか」
そして『殺人鬼』は夜を纏い、血の臭いがする場所へ向かう。
「あーあ、一体何処にいるのかな?『観察日記』の作者は」
了