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COLOR
【その他 官能小説】

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COLOR-6


淳はちまたでも有名な遊び人だった。事故の時にバイクに乗っていた彼女やあたしの他にも、うまい事を言ってはたぶらかしていた女がたくさんいた。
…あたしは…全く知らなかった。
嘘だと思った。
この期に及んでコイツらは何てでまかせを言うんだと…―。
淳、嘘だよね…?
淳の遺体の前で初めて涙を流した。
信じたかった。けれど不安は徐々に広がってあたしを支配した。
確かめたくても淳はもうこの世にいない。
ただ一言でいい。
ただ一言でいいの。
“嘘に決まってるじゃん”
そう、いつもの笑顔で言ってくれたら…あたしは淳の言葉だけを信じて生きていけるのに。
それすらも叶わないあたしはどうすればいいの??



気付くと春菜の肩が小刻みに震えていた。
泣いているのだとすぐにわかった。
初めて見る春菜の涙だった。
僕は何を言っていいのかもわからずに震えている春菜の白い手をにぎりしめる事しかできなかった。
僕が握り締めた手を春菜は強く握り返した。
『淳君は…そんなひどい奴じゃなかったんだろ?』
僕の問い掛けに春菜は力無く首を横に振った。
僕にもこの問い掛けが無意味な事だとわかっていた。
「…信じたかった…でも全部本当だった…。嘘だったのは………あたしと過ごした2年間の方だったんだよ。」
そう言った途端春菜の瞳から大粒の涙が溢れ出した。
その涙は僕が今まで見た中で一番美しくて、悲しくて、切なくて。
僕の心に溶け込んでくる涙だった。それはまるで僕の心の奥底にずっと封印していたものが解き放たれるような感情が僕を支配していた。
「…たくみ…今でも人を信じるのが怖い…」
僕は気付いたら春菜を抱き寄せていた。
きつく、きつく、春菜にこれ以上辛い事を話さしてはいけないと本能で抱きしめた。
『…もう、いいよ…』
僕はいつの間にか涙を流していた。
春菜に自分を重ねていたのかもしれない。
でも…春菜は淳の死に憎しみしか残らなかった。
踏みにじられた楽しかった過去。信じたくても信じられなくなった思い出。
暗く沈んでいく過去。
黒い鉛のような呪縛。
そこが僕とは唯一違うところだった。
郁美の思い出は手の届かないところで鮮やかに輝いては僕の現在の色までも奪っていく。
楽しい思い出ばかりが輝いて、郁美のいないこの世界をまだ信じていない。
そうすることでしか僕は自分を維持できなくて…
春菜は憎む事で今までを生きてきた…

僕は初めて出会ったあの時を思い出した。
春菜に感じた陰。
僕たちは似た者同士だった。
消えない過去に苦しんで、もう会えない人への尽きない思いに溢れている。
そんな二人の呪縛。

もう誰にも触れられないと思っていた僕の心の奥の方…―忘れかけていた感情が溢れ出して、あぁ僕は春菜に惹かれていたんだと気がついた。
きっと出会ったあの瞬間から。
僕の胸の中で震える小さな春菜が背負っていた過去…多分誰にも気付かれないように平気なフリして耐えてきた過去を背負ってきた春菜を抱きしめながら思った。
『…俺が守るよ。春菜が一人で背負ってきた過去…これからは俺も一緒に背負うから…』
僕の言葉に春菜はまた子どもみたいにわんわん泣いて僕に抱き付いた。
『…好きだよ。』
見上げた春菜の涙を服の袖で拭った。一通り拭き終わると僕の涙もついでに拭った。
…そして静かに僕たちは唇をそっと重ねた。
渇いた唇がふれあうような微かな口づけ。
触れ合った部分から痛いほどお互いの気持ちとか、背負ってきた思いが伝わって来て…この感情をどう説明していいかわからない思いをぶつけるように僕らは激しく口づけを重ねた。


止んだと思った雨がまた降り出して窓を静かに打つ音が聞こえた。
暗闇に浮かぶ春菜の白い体はひどく小さかったけれど綺麗だと思った。
僕はその小さな体に優しく口づけた。
震える春菜が壊れないように。そっと。
そして少し小ぶりな乳房を優しく愛撫すると春菜は吐息と共に声をあげて鳴いた。


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