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ゼビア・ズ・ショートストーリー
【ファンタジー その他小説】

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雪の贈り物-3

『トビィ、医務室行って脱脂綿とタオルを沢山持ってきてくれ』

「脱脂綿ですか?」

 グロウに言われたトビィは、タオルは何となく分かるが脱脂綿は何に使うのだろう?と首を傾げた。

『排泄物の処理……平たく言えばおしり拭きだ』

「はあ……グロウさんも詳しいんですね」

 魔性の女の恋人は20歳にしか見えない、1000歳越えの魔獣。
 500年前はマスターである召喚師サガンの子供達の子守りもしていた……と、グロウは懐かしそうに語り、人型に変わって早く行けとトビィに手を振る。

 医務室に行って指定のものを籠に入れて戻ってきたトビィは、赤子が泣き止んでいる事に気づく。

『お、サンキュー。タオルそこに広げてくれ』

 腕捲りをしたグロウは大鍋を風呂代わりにして赤子を洗っていた。
 赤子はきゃっきゃとご機嫌でお湯を撥ね飛ばしている。

『これで芯まで温まったなぁ〜?』

 正に猫なで声でグロウが赤子と話しているのを見てトビィは目を丸くした。
 普段のグロウはクールな感じで、まさかその彼が赤子相手にこんなにデレるとは思ってもみなかった。

『トビィ、タオル』

「あ、すみません」

 トビィは慌ててタオルを広げ、グロウはそこに赤子を座らせる。

「魔法で水気を飛ばしますか?」

 人間が使う魔法は使えないグロウに、トビィは聞いた。

『いや、子供の肌ってのは薄いんだ。出来るだけ魔法は使わない方が良いし、こういう触れ合いってのが大事なんだよ……なぁ?』

 赤子をタオルで拭きながら話すグロウ……最後の方は赤子に語りかけるような仕草で首を傾けている。
 それを見た赤子はグロウの真似をして同じように首を傾げた。

「なあ♪」

 可愛らしい声でグロウを真似する赤子に、トビィも思わずキュンとする。

「可愛いですねぇ」

『だろぉ?』

 ほっこりした気分で赤子を見つめていたトビィだったが、ふと表情を曇らせた。

「……こんなに可愛いのに捨て子なんですよね……」

 極寒の中、置き去りにされたならそういう事になる。

『だな……さっきの状態になったら普通の人間にゃどうしようもねぇからな』

 魔力持ちは遺伝もあるが、突然変異で産まれる事も多い。
 ゼビアはその出生率が高く、他国と比べて3倍はある。
 それでも50人に1人か2人という感じだ。
 魔力持ちは産まれて直ぐ分かる場合もあるが、成長と共に頭角を現す事もある。
 産まれて直ぐ分かった場合は魔力封じの護符を使って暴走を抑えたりするのだが、いきなり暴走された日には対処しきれなかったりするのだ。
 その場合、この赤子のように捨てられたり、酷い場合は魔物だと言われて殺されたりもする。
 ただでさえ出生率が低い魔力持ちが、ちゃんと成長出来るのはほんの一握りなのだ。


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