雪の贈り物-2
『猫じゃねぇ』
一応、リンに突っ込んでからグロウは獣型に変わり赤子を懐に寄せてしっかり毛皮で包む。
トビィも鍋やヤカンを取りに走って部屋を出ていった。
移動出来るストーブを大量に運び、鍋やヤカンをその上に置く。
部屋の中は真夏のように暑いのに、赤子の体は冷たいままだ。
『つうか、俺まだ寒い』
リンとトビィは汗だくなのに対して、厚い毛皮のグロウは寒そうに震えている。
「……あっ!!そうか!!」
リンは両手をポンっと打ち合わせて空中に魔法陣を描いた。
薄い桃色の光を放った魔法陣を、リンは赤子の額にペッと貼り付ける。
すると、赤子の顔にスッと赤みが差して体温も上がってきた。
その様子を見て3人はほぉ〜っと安堵の溜め息をつく。
「この子、魔力持ちなのね……」
多分、氷や水の系統と相性が良いのだろう……魔力の制御が出来ずに暴走していたようだ。
リンは、産まれた途端に火を吹いたエンを思い出す。
「とりあえず、魔力封じの魔法陣で抑えときましょ」
落ち着いた3人はグロウの懐に包まれた赤子を改めて見る。
「1歳半ぐらいかしらねえ?」
ピンク色に色付いた頬はぷくぷく、黒い髪はつやつや……性別は分からないが、とても可愛い顔たちだ。
その子がふいにパチリと目を開ける。
ズキューン
赤子の目はルビー色のぱっちりお目め、睫毛はバサバサ、その愛くるしい顔はリンとグロウの胸を射抜いた。
「『かっわいぃ〜』」
リンは両手を頬に当てて体をくねらせ、グロウはブワッと毛羽だった尻尾をくにくにさせる。
「ふえ……」
「『あ』」
「ふぎぃやあぁああ!!」
2人の声に驚いた赤子は愛くるしい顔を歪めて大声で泣きだした。
「ごめんごめん〜あんまり可愛いから♪」
リンはこれっぽっちも動じずにグロウの懐から赤子を取り上げ、よしよしとあやす。
「慣れてますね」
「そりゃ、無駄に140歳越えてないもの♪」
そうだった……35歳ぐらいにしか見えないこの女性……実は140歳越えの魔性の女。