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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキ!U 『是奈、エースを狙え!?』-2


「ターイムッ! 緊急タイムーっ!!」
 空かさず、テニス部部長『栃本 美香(とちもと みか)』が叫びながら、真由美に駈け寄り、
「大丈夫っ! 藤平さん!!」
 と、彼女を抱き起こしたようだが。
「すみません……部長っ。……駄目みたいです」
 涙で顔をクシャクシャにしながら、真由美も、これ以上のプレイ続行は不可能だと、訴えていた様である。どうやら押さ
え込んでいる右の足首も、赤く腫れ上がって来ていた。
 部長は1年生の部員を呼び付けて、真由美を手伝ってベンチへと引き込ませると、不本意では有ったが、この試合の棄権
を審判に告げた。そんな美香の声を背中に聞きながら、真由美も涙を止められずに居た。

 是奈は「だいじょうぶぅ……藤平さん」と、1年生が酌(く)んで来てくれたバケツの水に、右足を突っ込ませて泣いて
いる真由美の背中を撫でながら、彼女を励ましていた。
 そんな真由美を見下ろしながら、美香も言う。
「困ったわねぇ…… 藤平さんが出られないと成ると、次のダブルスの試合どうしようかしら」
 どうやらこの後の予定として、真由美は彩霞と組んで、ダブルスの試合に出る予定だったらしい。
 ところが。
 彩霞とペアで出るはずの真由美がケガで欠場となり、テニス部部長である美香も、どうしたものかと考えあぐねざるを得
ない。
「おい都子っ! 俺と組んで次の試合出ろっ!」
 彩霞はしかたなく、都子にそう言ってはみたものの。
「駄目だよ! あたしは宏美ちゃんと組んで、Bコートだもん。出れる訳ないってぇ」
 そう言って都子は、自身の胸の前で両腕をクロスさせ、X(バッテン)を作って見せたりする。
「しかたないわねぇ、1年生でいいわ! 誰か中村さんと組んで出なさい!」
 苦肉の策とばかりに、部長も暇そうな1年生の部員に声を駈けるが。なにやらそれを聞いた途端、1年生達は全員、顔を
青くすると、一斉に首を横に振り始めたではないか。一体全体、彩霞と組むと何か良くない事が起きるとでも言うのか、
そんな光景を是奈も不思議そうな顔をして、見詰めていた。
 そんな1年生達の姿を見たせいばかりでは無かったが、こうなったら仕方がない、とばかりに、
「解ったわ! 私がでましょう!!」
 部長の美香、自ら彩霞とペアを組むべく、羽織っていたガーディガンを脱ぎ始めた様であったが。
「部長っ! その心配なら要らねーーぇ!」 
 そう言って、彩霞は美香の顔の前に手をパーにして翳(かざ)し、彼女の出陣を止める。
 美香は少し残念そうな顔をすると、
「あっ……そう。誰か他に当てでも有るの」
 と、彩霞に問い返しもする。
 彩霞は徐に、ベンチの一番は端っこに居た是奈に近づくと、来るなり彼女の腕を ”ムンヅ”と掴み上げて。
「是奈! お前が俺と組んでダブルスに出ろ!!」
 そう言って、怪しげに口元をニヤつかせた。
「はいぃーーっ! あたあたあたっ……あたし〜〜っ! なに言ってるかな〜! あたしテニスなんかできないよ〜〜!!」
 突然そんな事を言われて、当然、是奈も焦り捲くるが。
 そんな是奈を前にして、彩霞はいたって冷静だったりする。
「何っビビってやがるんだ! お前だって体育の時間にテニスぐらいやったろっ!!」
 と、掴んだ是奈の腕を放さない。
「え〜〜! そんな事と言ったって…… ぶぶっ部長さん! あたし〜そんなぁ〜無理ですよぉ〜〜!!」
「大丈夫だ是奈っ! お前なら遣れる! いやっ、俺のパワーテニスに着いて来られるのは、お前っきゃ居ねー!!」
 おいおい! 元々のパートナーだった藤平さんは、そんな『パワーキャラ』じゃ無かったでしょうがぁーっ! と、是奈
は彩霞のいい加減な説得に騙されるものかと、尻込みしながら、彩霞に掴まれた腕を振り払おうとするが。
 そんな是奈の嫌々も何のその。
「いいわぁ。中村さんが推薦するなら是奈さん……でしたっけ、あなた藤平さんの替わりに出てちょうだい。大丈夫、
責任は全てわたしが取りますから」
 追い討ちを掛けるように、部長の美香までもが、そんな事を承認してしまう。
「しょっ、しょんなぁー部長さんまでぇ〜!!」
 どうやら是奈、泣いても笑っても、彩霞と組んで次のダブルスの試合に出るはめに成ったようである。


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