双子の兄妹-15
ケンジはクローゼットの中に入って行った。「マユ、何枚かあるけど、どれがいい?」
「え? 何でもいいけど……」
「お、おまえもちょっと来いよ」狭いクローゼットの中からケンジが躊躇いがちに言った。マユミは少し戸惑いながらも、その薄暗い空間の中に入っていった。
「これと、これ。こっちにもあるけど」ケンジは3枚のTシャツを手にとってマユミに見せた。
「汚れるかも知れないから、一番着古したのでいい」
「じゃあ、これだな」ケンジは一枚を手に残して、後の二枚は引き出しにしまった。「う、後ろ向けよ」
「え……う、うん」
マユミは少し赤くなりながらケンジに背を向けた。ケンジは手に持ったTシャツを広げ、背中からマユミの肩に合わせてみた。「ちょ、ちょっと大きいかな」そして彼女の背中にそっと押し付けた。
ケンジの指が自分の肩や背中に触れる度にマユミの鼓動は速くなっていった。その事を悟られまいとマユミは慌てて言った。「だ、大丈夫だよ。これで」そしてクローゼットを出た。
「じゃ、じゃあ、借りるね。終わったらちゃんと洗って返すから」
「そのままでもいいぞ」
「え?」
「い、いや、洗濯するの、面倒だろ?」
「エチケットだから……」マユミは少しうつむいてそう言った後、ケンジの部屋を出た。
ケンジは、たった今、間近で感じた妹の体温の余韻を味わっていた。自分の指で触れた彼女の肩の柔らかさや背中の温もりを、閉められたドアの前に佇んだまま反芻していた。彼の鼓動は図らずも速くなっていった。
部屋に戻ったマユミは、たった今ケンジから借りたTシャツを着てみる事にした。上着を脱いでブラジャーを外した。露わになった上半身に、兄の着古されて、少し白く毛羽立った黒いTシャツを直接身につけた。布が乳首を柔らかく擦り、マユミは、顔がますます上気するのを感じていた。
ショートパンツも脱いでみた。そして姿見に自分の全身を映してみた。Tシャツは白いショーツが半分隠れるぐらいの丈だった。
その時部屋のドアがノックされた。「マユ、」
「ケン兄!」
マユミは慌てた。「ちょ、ちょっと待って。まだドア開けないで」
「わ、わかった」
マユミは急いで元のTシャツに着直し、パンツも穿き直して部屋のドアを開けた。
「ど、どうしたの? ケン兄」
「ご、ごめん、着替えかなんかしてたのか?」
「ま、まあね」
ベッドの上に、さっきマユミに貸した自分の黒いTシャツがあった。脱ぎ捨てられたブラジャーがそれにまつわりつくように絡まっているのにケンジは気づいて、慌てて目をそらした。
「い、いや、あの、あのな、」ケンジは口ごもった。
マユミの身体は、もう表情や態度に出てしまうほどに疼き始めていた。一昨日目にした逞しい兄の身体と、今し方自分の身体に何度も触れた兄の指の感触を思い出したのだった。
ケンジの身体はすでに熱くなっていたが、マユミの姿を見るなり、ますますその温度が上昇した。数日前に見たマユミの美しい白い肌と豊かなバストを思い出したのだった。
彼は着衣越しに妹の胸の膨らみを見つめた。「マ、マユ……」
「ケ、ケン兄……」
ケンジは部屋に入るとドアを乱暴に後ろ手で閉めた。そして目の前の妹の身体をぎゅっと抱きしめた。
「えっ!」マユミは小さく叫んだ。