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大陸各地の小さな話
【ファンタジー その他小説】

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『きょう運な休日』-1


 ルーディとラヴィが住む家は、二人で暮らす分には十分な広さだが、今日は大賑わいだった。
 男女合わせて六人で、小さな居間兼食堂は満員だ。
 男の方は食卓テーブルに、女性陣は居間のソファーでくつろいでいる。

「ラヴィさんのお菓子は絶品と聞いていたから、楽しみにしてたの。とっても美味しいわ」

「おかわりもあるから、いっぱい食べてくださいねV」

 ソファーに腰かけ、幸せそうにパウンドケーキをほお張るエヴァ王妃の隣りに、ラヴィは猫が懐くようにチョコンともぐりこむ。

 本物の国王や王妃など、ラヴィにとっては雲の上の存在だった。
 下々の者と気軽に接したりなどせず、いつもツンと取り澄ました近寄りがたい存在だと思っていた。

 彼女はルーディと同年というから、サーフィやラヴィとは八つ年上だ。
 そして三人の子どもを持つ母親でもあるらしい。
 しかし、話が合わないとか、身分が違って気後れとか、それら一切を感じさせないのは、その不思議な癒しの魅力だろう。

(本当になんだか、近くにいると癒される〜)

 親友のサーフィが言うとおり、エヴァ王妃は究極の癒し系に違いない。
 傍にいると、森林浴でもしているような、ほんわり幸せな気分になれるのだ。

 エヴァの反対隣りには、やはり和みきった顔のサーフィが、喉をごろごろ鳴らさんばかりにくつろぎきっていた。

「エヴァさんのお隣りは、やはり落ち着きます〜」



「君の奥方は、エッセンシャルオイルでも放出しているのでしょうかね?」

 椅子に腰掛けその光景を眺めていたヘルマンが、おしのび中の国王に尋ねる。

「さぁ?とにかくわかってるのは、彼女は私の女神という事だけだ」

 ヴェルナーが機嫌よく答えた。

「……あー、はいはい」

「ま、色々あったから三人とも疲れてるだろうし、ちょうど良かったじゃないか」

 行儀悪くテーブルの上に座っているルーディが、酒瓶を取り上げた。

「おかげで、こんな戦利品まで手に入りましたしね」

 酒瓶に視線を走らせ、ヘルマンは苦笑いする。

 ラビの『強(凶)運』は聞いていたし、世の中には説明がつかない現象が存在するのも承知だ。

 それでも今日は…



 どうしてこうなった……!!!



 大陸随一の軍師たるヘルマンでさえ、そう頭をかかえたくなる一日だった。



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