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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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期末テスト=恋人検定テスト!?-5


「白雪〜」
「はいはい、どこがわかんないんだ?」
勉強を始めて五分で憲が泣きついてきた。
場所は憲の部屋だ。アタシの部屋で勉強したって構わないが、母さんがいる状態でアタシがまともに憲にものを教えられるか不安だったために移動した。
憲の部屋は落ち着いた雰囲気がする。壁には何故かウクレレが飾られているが、弾けないらしい。まぁ、インテリアのひとつというわけだな。
棚には漫画と小説が半々ぐらいで並んでる。憲はけっこう読書家だ。高校生にしては、かなり読む方だと思う。
他にもコンポにMD、TVにゲーム。憲はゲーム好きでもある。憲曰く「恋愛シュミレーションと音楽系以外ならなんでもござれ」らしい。
さて、現在、憲は苦手中の苦手である数学を勉強している。正直、呆れるぐらいにできない。これで学年10位ははっきり言って無謀を通り越している。
が、憲がやる気になっている以上、アタシは全力でサポートするのだ。
「ここで、この公式を使ってだな……」
「ほう、成程成程」
シャーペンを走らせ、アタシの解説に憲が頷きながら相槌をうつ。
「わかったか?」
「わかった!」
そのまま憲は教えた通りに解いていく。ちょっとあぶなっかしいが、ちゃんと解けた。
そのまま二時間程して、今日予定していた分の数学は滞りなく終わった。
「う〜ん、俺ってやればできるんだなぁ」
「アタシが教えてるからだろ」
「もちろん感謝してるさ。このお礼はいずれまた、精神的に」
精神的に……?
「どういう意味だよ?」
「愛で返すって意味」
「あ、愛!?」
い、いきなりなに言い出すんだ!!あ、愛で返すって、一体どんな風に………って、なに考えてるんだアタシは!?
「クククッ、白雪、顔が真っ赤だぞ」
「う、うるさい!!憲が悪いんだ!!」
あんな事言われたら、真っ赤になるに決まってる。
「……ずいぶん熱いわねぇ、この部屋。暖房効き過ぎてるんじゃない?」
不意に後ろから声がしたので振り返ってみると……
「あ、姉貴!?」
「梓さん!?」
憲のお姉さんの梓(あずさ)さんが立っていた。
「い、いつかからそこにいやがった!?」
「ちょっと前から♪」
……見られてた。
「まさに熱々バカップルって感じで見てて微笑ましかったわぁ。『愛で返す』だって!普通は絶対言わないわよ」
と、笑いころげ始めた。
「ノックしろよ!!」
「だって、勉強中だったんだもん。悪いと思って」
「だったら、入ってくるな」
「あら、ひとつの部屋で男女が二人っきりなんてシュエーションじゃ、白雪ちゃんが心配になるじゃない」
「人を狼みたいに言うな!」
「男はみんなそんな事言っときながら、本性は獣よ、獣」
獣って……やっぱり憲も……こう……。
あぁ、やめやめ!!
思考が変な方向に行こうとするのを止める。意識しちゃうと勉強にならん。
「で、白雪ちゃんと熱々勉強タイムで桃色な幸せを満喫してる我が弟よ……」
「……なんだよ?」
梓さんがいきなり真剣な顔つきになった。
「さっき言ってた獣、誰でもいいから一匹紹介して。顔の良い奴を」
「……でてけ」
とまぁ、こんな感じで憲と梓さんの姉弟漫才は幕を閉じた。



「おい、憲。死んでないよな?」
「…………殺すな」
六日後の教室。机に突っ伏した憲は弱々しい声で高坂に応えた。
「矢城のお母さんも無茶言うよな。憲に理系教科で高得点取れって、言ってみりゃ、生身でサイヤ人に戦いを挑むようなもんだぞ」
つまり、それほど無謀だって事だ。
「うるせぇ………」
もはや瀕死の憲は、それでも尚、物理の教科書を捲る。
もうやめろって言いたい。最近の憲は見るからにまったく寝てない。
でも、やめろってアタシが言ったら、それはアタシが憲と付き合う事を母さんに認めさせるチャンスを奪う事になる。
そんな事、アタシにはできない。
運命の期末まで、あと一日。全然自分の勉強をしてないアタシは、そんな事はつゆも気にせず今日も憲に数学を教えるのだった。


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