第二章 媚薬地獄-8
「い、痛い……」
バストの膨らみを下からきつく揉み上げては離し、再びきつく揉み上げては離す。
これを何度か繰り返してから、今度はネチッこい手つきでキュッと引き締まったウエストのラインや太ももを撫でまわしていく。
その手つきの不快さに、まるで無数の虫が身体中を駆けまわってくるような感覚が美優を襲った。
「あ……うう……」
太ももの内側を撫で回している男の手が、両脚の付け根まで下りてきては性器に触れるところで止どまる。
そしてすぐに引き返しては太ももの外側や腰、背中へと這いまわっていく。
それは、あえて性感帯を避けているような動きだった。
「あはぁ……」
大村の手が再び乳房へ移動してくると、美優は迂闊にも喘ぎに近い声を漏らしてしまった。
その掌が下乳のふくらみを甘美に掬い取った。
だが力加減が何とも意地悪で、バストの性感を焦らすようにやんわりと揉みあげてくる。
(も、もどかしい……嫌なのに……焦れったい……)
無意識のうちに、自ら胸をせり出していることに美優は気付いていなかった。
「あ、ああぁ……」
身体中を駆け回っていた不快な虫、それがいつしか不快ではなくなっている。
鳥肌を立てるようなゾワゾワとしたものには違いないが、不快と言うよりは、焦燥感に満ちた淫猥な欲望のような感覚に近かった。
美唇から溢れてしまう甘い吐息は、そのせいなのだろうか。
アイマスクをつけた顔も、ほんのりとだが淫らなピンク色に染まりだしていた。
「どうした? あそこが疼いて仕方ないのかね? ふははっ、何も恥ずかしがることはない。もうお互い、尻の穴まで見た仲じゃないか。ささっ、遠慮せずにそのバイブを使いなさい」
落ち着きを失くしてきた裸身に、大村がニタニタと笑みながら囁いた。
(こ、こんなイヤらしい物……)
アイマスクの中で恨めしい眼を作り、手にしている張り型のバイブをギュウッと握り締める。
だが心とは裏腹に、手から伝わってくる張り型の頼もしさに秘孔の奥はズキズキと疼き立ってしまう。
崩れそうになる理性を、美優は必死で自制心を奮い立たせながら堪えた。
「おやおや、身体のほうは物欲しそうにしてるのに……頑固だな」
大村は、目の前の細い首筋にガブッと喰らいついた。
そしてすぐさま舌を伸ばし、ベロッと耳朶のところまで舐め上げていく。
痺れるような感覚が身体中の性感帯に向かって走り、美優は堪らず唇を戦慄かせた。
そのままチュルッと耳朶を咥え込んだ舌が、今度はニュルニュルと耳の中へ滑り込み、ナメクジのような動きで溝や奥のほうへと徘徊を始める。