第二章 媚薬地獄-4
美優の絶望感は、さらに深みへとはまった。
どんなに考えても、これといった答えは見つからなかった。
大村の卑劣な要求を受け入れてしまった事……あれは焦りが生んだ過ちだと誰に理解されようか。
美優は、何度も何度も溜息をつきながら、のろのろと寝室に向かった。
そして、できるだけ目立たぬようにと、白のインナーにベージュのカットソー、それにブラウン系のカットレングスパンツをセレクトし、帽子も顔が半分ほど隠れるようなツバの長いものを選んだ。
重い足取りで商店街へ向かう美優。
太陽が、昨日と変わらぬギラつきを見せている。
それが昨日の汚辱を思い起こさせ、余計に気が滅入った。
商店街へ着くと、美優は辺りを警戒しながらそそくさと裏道に入った。
建物の間にある細い路地を小走りで進み、焦ったようにカメラ屋の裏口を探す。
(あ、あった……ここだわ)
美優は、呼び鈴のないドアを震える手でノックしてみた。
カチャ―――
しばらくして、ドアがスーッと内側に開いた。
「いらっしゃい、奥さん。絶対に来ると信じてましたよ」
聞きたくもない声がゾゾゾッと鼓膜に走り込んでくる。
美優の肌が、それだけで鳥肌を立てた。
「ほら、早く中に入りなさい。人に見られたくはないでしょ?」
大村に促され、美優は昨日以上にきつい眼を向けながら室内へと入った。
「店はもうクローズしてあるから安心なさい。今日はね、奥さんにたっぷりと喜んでもらおうと思ってさ、とっておきの物を用意してるから。ひひっ、楽しみにしててくださいな」
怪しく言う大村に、美優の眉が怪訝に釣り上がっていく。
「奥さん、ボサッとしてないで部屋に上がりなさい。私もすぐに行くから、全裸になって待っていなさい」
不意に睨むような冷たい眼を向けてきた大村に、美優は少したじろいだ。
しかし、大村の命令に逆らうことは出来ない。
ここで大村の機嫌を損ねでもしたら、昨日の屈辱が台無しになってしまう。
美優は、とにかく写真をすべて取り戻すまでの我慢と、自分に強く言い聞かせながら部屋に入った。
やり場のない怒りに震えながらも、ゆっくりと衣服を脱いでいく美優。
こんな卑劣な男の言いなりになっている自分が、なんとも情けなくて仕方ない。
どうしてこんな事になってしまったのか―-―そればかりが胸をつく。
美優は、小さなパンティをつま先から抜き取って全裸になると、敷かれている布団の上で正座をして大村を待った。