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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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fainal2/2-24

「秋川さん!」

 そこへ、控えの下加茂が彼の帽子とグラブを持って現れた。

「惜しかったですね!」

 受け取る秋川。気休めにもならない後輩のひと言に、苦笑いを浮かべるしかなかった。

「直也と違って……持ってない奴はやっぱり駄目だな」

 口から漏れ出る自虐めいた言葉。

「次、次ィ!切り替えて行きましょうよッ」

 下加茂は明るくそう言って、受け取ったヘルメットやバット、手袋を持ってベンチに引き上げていった。
 一見、能天気と思わせる印象だが、下加茂と接したことで、秋川は惨憺たる思いが晴れた気がした。

(そうだよな……切り替えないと、次には進めないよな)

 秋川が、ポジションであるショートに駆けていく。黎明を迎えた表情で、野手同士のボール回しに入っていった。

 五回表、沖浜中の攻撃は九番から。一番に続く打順とあって、投球練習にも力が込もる。

「ラストォ!」

 主審のかけ声を合図に、内、外野手で回していたボールが外へと出される。
 直也がセットポジションの構えから、今まさに投球動作に移ろうとしたその時、

(あれ……?)

 一瞬、歓声が掻き消され、目の前が暗くなった。

(なんだ……これ?)

 虚実か現実なのかも区別がつかない。初めての感覚だった。
 気を取り直して最後の練習球を投げ込むと、すぐに達也が走ってきた。

「なんだ?今の間は」

 直也を見つめる憂いた眼。長年組んできただけに、わずかな変化も嗅ぎ分ける。
 そんな懸念を、直也は笑って退けた。

「何でもないよ。早く戻らないと、主審にドヤされるぞ」
「しかしな……」

 初めて見た相棒の異変は、達也の心に、もやもやとした不安を植えつけた。
 しかし、当の本人に、先ほどの変な感覚に対して自覚することなかった。

 先頭バッターを危なげなく三振に獲り、達也は「自分の杞憂だったのか」と、安堵のため息を吐いた。
 もし、ここで直也まで欠く事態に陥ったら、試合が成り立たなくなってしまう。

(彼奴には、なるべく長いイニングを投げてもらわないと……)

 ──まだ、佳代に淳、それに中里と残っているが、病み上がりの佳代は多分、一イニングだけだろう。淳もせいぜいニイニングが限度だ。ニ年の中里に至っては、登板自体があり得ない。
 そうなると、最低六回までは直也を引っ張る必要がある。


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