拾い物-9
「は……大…丈夫」
じっと様子を見ていたカリーに伝えると、彼女はやっと安心して体の力を抜く。
今までも何度かうなされた事があり、暴れた事もしばしば……その時は容赦なく水をぶっかけられる事になっている……現に今もカリーは水の入ったバケツを持っていた。
「そ。なら良いけど」
カリーはバケツをベットの下に置き、その水に布を浸して絞ってゼインの顔に乗せる。
「……てめえ……雑巾じゃねぇか……」
「夜中に起こされた仕返しよん♪」
いつもと変わらないカリー……過度な心配も同情も無し……いい感じでほっといてくれる彼女に、ゼインは心の中だけで感謝した。
その時
2人は妙な気配を感じて、同時に動いた。
カリーは窓から外を覗き、ゼインは軋む体に鞭打ってドアに背中を付けて外の様子を伺う。
(見えるか?)
囁き声でカリーに伺うと、彼女は首を横に振って答えた。
ゼインの方も足音などは聞こえない……が、この肌にまとわりつく様な殺気は尋常じゃない。
唇を舐めたゼインは一度視線を上げて、カリーに目配せをした。
バキャッ
何の前触れもなくいきなりドアが破られた。
鍵も蝶番も無視してドアは部屋の中に倒れ、同時に覆面を被った黒づくめの人間が3人、部屋に乗り込み、窓からも2人入ってきた。
「!!どこだ?!」
しかし、そこにゼイン達の姿は無い。
隠れるようなスペースは無いし、ドアも窓も見張っていたので出ていったハズは無い。
「おいっ」
バスルームを覗いた1人が顎を動かして上を示した。
そこには、換気用の穴があり蓋がパタパタと揺れている。
「上だ!」
黒づくめ達は二手に別れて外に出て行った。
「チビで良かったね♪」
屋根の上を静かに移動しながら声をかけるカリーを、ゼインはギリッと睨み付ける。
「ホントの事じゃ〜ん♪」
確かに、換気用の通風口はとても狭く普通の成人男性だとつっかえるサイズだった。
ゼインの事をチビチビ言うカリーもゼインと変わらない体格。
更に小柄なポロは何も問題は無いし、本当に体が小さくて良かっ……と、ここまで考えたゼインは『小さくて良かった』などと自分で思ってしまった事で自己嫌悪に陥る。
ぐぐぐ、と唸るゼインに担がれたポロが、その背中をぱしぱし叩いた。
後ろ向きに担がれたポロには後方が良く見えている。
ゼインが軽く振り向くと2つの人影が追いかけてきていた。